程なく、ジョージア州ピーチツリーシティーに引っ越した。田舎暮らしを愛する人にとって、この町はパラダイスだ。市内にはゴルフカートで走れる道路が総延長150キロも張り巡らされており、大半の家が通学や買い物にカートを使っている。近隣の公共プールは、3本の通りの住民で貸し切り状態にできた。
私は個人でウェブサイト作成などの仕事をしているから、ネット接続さえあれば住む場所はどこでもいい。そこで、新しいすみかの候補を家族で話し合った。船、潜水艦、無人島などとっぴなアイデアがいくつも出たが、その中では核シェルターに住むという案がまだまともに思えた。 アメリカでは通信大手AT&Tが、1960年代に核攻撃から通信インフラを守るための施設として、多くの核シェルターを建設した。だが80~90年代になると、おそらく通信回線が同軸ケーブルから光ファイバーに移行したことを受けて、大半が売りに出された。購入したシェルターを直して住居にした人たちがいることも分かった。私たち一家は、核シェルターに住むというアイデアに心を奪われ、着々と準備を進めた。そして昨年6月、とうとうアメリカの真ん中辺りにあるシェルターを購入した。内部には、オフィスや通信設備が設置されていた部屋など、4つの大きな部屋がある。最も大きな部屋は、もともとは蓄電池室だったという。シェルターは銅線の網で覆われている。核爆発に伴って発せられる電磁パルスを遮断するための構造だ。正面と裏口にそれぞれ重さ1トン前後の防爆扉があり、脱出用ハッチもある。核爆発が起こっても、直撃しない限りは耐えられるのだろう。【関連記事】
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