オンライン初診料上げへ 2500円程度、対面との差縮小
厚生労働省はオンライン診療の初診料について、いまの水準から2割程度引き上げる方針だ。新型コロナウイルス感染症に対応するため特例的に初診から認めているが、利用は伸び悩んできた。4月からの初診の恒久化にあわせ報酬水準を引き上げて出遅れの挽回を狙う。対面診療の報酬の水準とはなお差があり、普及につながるか見えにくい部分も残る。
26日の中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)で大筋合意した。医療サービスの公定価格である診療報酬の2022年度改定に盛り込む。
患者負担は増加
今回の改定で、新型コロナウイルス禍で特例的に解禁したオンラインでの初診を恒久化する措置を講じる。20年4月に導入された特例では、初診料は2140円だった。厚労省はこれを2割弱引き上げ2500円程度とする方針で、具体的な水準は2月に決める。
疾患などに応じて定められる医学管理料についてもオンラインの場合は引き上げ、対面の水準に近づける。一連の報酬の引き上げに伴い、患者の自己負担分(現役世代は3割)も増える。
オンラインの初診料は対面の7割強の水準にとどまっていたが、9割弱まで差が縮む。これまで対面との差額を埋め合わせるため、医療機関が保険外の費用として1000円程度の「システム利用料」を徴収するケースがあった。差額が埋まればこうした追加費用が減り、患者負担が少なくなる可能性もある。
医療機関の収入となる診療報酬引き上げに踏み切るのは、新型コロナ禍でもオンライン診療が想定以上に普及していない実情があるためだ。
コロナ特例を設けた当初こそオンライン診療に対応する医療機関の割合は伸びたが、その後は低迷が続く。21年6月末時点で全医療機関の15%程度にすぎず、初診から対応するところは6%程度とさらに少ない。
政府の規制改革推進会議は昨年12月、報酬水準の低さが取り組みの鈍さにつながっているとみて、見直しの必要性を訴えた。ただ対面診療の場合は初診料が2880円と、改定後のオンライン初診料より高い。対面との報酬水準の差が縮小したとはいえ、どこまで普及を後押しするかは読めない。
26日の中医協でも、健康保険組合連合会の委員らが「対面診療と同等の水準とすることも含めて、相当な引き上げが必要」と主張した。日本医師会の委員らは「対面でしか実施できない診療行為があり、同等の評価はあり得ない」などと反論した。日医の中川俊男会長は同日の記者会見で「オンライン診療はあくまで対面診療の補完だ」との考えを示している。
中医協では最終的に対面と一定の差を設けながら、オンライン診療を普及させるために水準も引き上げるという折衷案で合意。対面診療とコロナ特例の「中間程度の水準とすることが適当」との考えでまとまった。
新型コロナ対応を巡っては、自宅療養する感染者に対する保健所による健康観察が追いつかなくなるといった課題があらわになった。
政府や自治体は、保健所に代わり医療機関による健康観察を進めようとしたが、オンライン診療のインフラが普及していないことが出足の鈍さにつながった経緯がある。厚労省は報酬引き上げをきっかけに利用が広まれば、今後の感染症対策の強化につながるとみている。
同日の中医協では4月から公的医療保険を適用する不妊治療の概要を示した。人工授精や体外受精、顕微授精などを対象とする。体外受精や顕微授精は、治療開始時の女性の年齢が43歳未満であることが条件となる。
流産を防ぐために受精卵の染色体異常を調べる「着床前検査」への適用は見送った。命の選別につながるといった倫理面の懸念に配慮した。