トンガの海底噴火、広島の原爆よりも大きな破壊力=米NASA

Damage to Tonga's shoreline

画像提供, Consulate of the Kingdom of Tonga

画像説明, トンガ海岸沿いの様子

アメリカ航空宇宙局(NASA)は24日、南太平洋の島国トンガで起きた海底火山の噴火が、第2次世界大戦中に広島に投下された原爆の何百倍もの威力があったと発表した。

NASAゴダード宇宙センターの主任科学者ジム・ガーヴィン氏は、「予備的な試算だが、噴火で放出されたエネルギーの量はTNT火薬4~18メガトンに相当すると考えている」と述べた。

NASAは、トンガでの火山噴火が放出した力学的エネルギーは、広島での原爆爆発の数百倍だと指摘し、1980年のセント・ヘレンズ山噴火のエネルギーは24メガトン、1883年のクラカトア火山噴火のエネルギーは200メガトンだったと説明した。

広島に投下された原爆から放出されたエネルギーは、TNT火薬約15~16キロトンと推定されている。1メガトンは1000キロトン。

今月15日に噴火したフンガ・トンガ フンガ・ハアパイ火山は2015年、2つの島の間に陸地が形成されてできた。

NASAによると、今回の噴火は非常に強力だったため、新しい陸地は全て破壊されたほか、古い2つの島の「大部分」もなくなったという。

噴火によって広がった火山灰やガス、破片などのため、トンガ当局は対応に苦慮している。

トンガ政府は、人口の80%以上が噴火とそれによる津波、火山灰の影響を受けていると発表した。これまでに津波で3人が亡くなったと確認されている。

Satellite images showing volcano island has been destroyed
画像説明, (上から)フンガ・トンガ フンガ・ハアパイ火山の噴火前(2022年1月7日)と、噴火2時間前(1月15日)、噴火から3日後(1月18日)の衛星写真。噴火前には、2つの島をつなげていた火山のクレーター部分が海面に沈んでいる

噴火と津波による直接的な影響として、火山灰によって真水が汚染され、コレラや下痢といった病気につながるリスクが高まることが懸念されている。当局は、最近の水質検査では地下水や雨水を飲んでも安全だと確認できたと述べている。

しかし、細かい火山灰や排出されたガスは、さらに公衆衛生上のリスクになるという。呼吸疾患や心血管機能への影響、肺や目、肌への刺激などが挙げられる。

それによると、特に被害を受けているマンゴー島の62人が、「家と所有物全てを失った」ため、ノムカ島に移動したという。

ただし、食料や支援物資不足のため、マンゴー島からの避難民をさらに本島のトンガタプ島に移動させることになるかもしれないと述べた。

また、ノムカ島を中心に20数人の負傷者が出ている。

救助隊は、津波の影響で既存の医療施設が破壊されてしまったため、現地に野外病院を設置しているという。

<関連記事>

先週からは、救援隊や多数のボランティアらによって空港の火山灰が除去されたため、ニュージーランドやオーストラリアが主導する形で国際的な支援が始まった。

支援は新型コロナウイルス予防の観点から非接触で行われており、空軍や海軍の貨物機や船が飲み水や食料、シェルターなどの支援物資を運んでいる。

一方で通信設備は機能不全に陥り、トンガは噴火から5日間、外国と連絡が取れなくなっていた。

同国に通じる唯一の海底ケーブルは切断されており、インターネットを含めた通信回線を完全に復旧させるには、4週間以上かかる可能性があるとされている

外国からの支援が到着したことで、トンガの情報が急速に広まってきている。

新型コロナウイルス感染への懸念から、支援活動は現在も地元のグループや赤十字などが行っている。現在、感染者のいないトンガは、アウトブレイクを防ぐため、外国からの支援活動の入国を断っている。

しかし国連の代表は、被害の規模から、この方針も変わるかもしれないと述べた。

Presentational white space