阪神タイガースWomen主将・三浦伊織が心に刻んだ言葉、「女の子たちがずっと野球を続けられる時代に」

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 全国の高校で野球に打ち込む女子選手が増える中で、卒業後の受け皿作りにプロ野球の球団が動き出した。

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「みんなめちゃくちゃ野球が好き」

 「野球はもうやめようと思っていたけど、三浦先生みたいになりたいです」

阪神タイガースWomenの三浦伊織
阪神タイガースWomenの三浦伊織

 阪神タイガースWomenの主将、三浦伊織(29)は、球団の野球スクール「タイガースアカデミー」で指導した女子児童の言葉を胸に刻んでいる。

 プロ野球の阪神が2021年に創設した女子アマチュアクラブチーム1期生18人の1人。1年目のシーズンは、関西のクラブや大学計11チームによるラッキーリーグ最上位カテゴリーに参加し、全勝で優勝した。

 同じ伝統の縦じまユニホームを着るが、プロではない。アカデミーコーチとして子供に教えてきた三浦は今月からコーチをはなれ、普及に携わる。他の選手は警備会社や広告代理店などで働く。甲子園の室内練習場を週3回、個別練習で使えるが、全員が集まれるのは週1回。「みんなめちゃくちゃ野球が好き」。限られた時間に白球を追う日々は充実している。

野球あきらめきれずトライアウトへ

 愛知県出身で兄の影響で小学1年の時に野球と出会った。中学では続ける環境がなく、ソフトボール部へ。高校は硬式テニス部で全国総体団体で4強に入った。

 野球を諦めきれず、合間にバッティングセンターに通った。進路を考えていた時、父が新聞で10年のリーグ戦開始に向けて準備が進む「日本女子プロ野球」の記事を見つけた。「ダメでもともと」とトライアウトを受けた。打撃で凡退し、あきらめかけていたが、結果は合格だった。

 「足が速かったから取った」と後で聞いた。初めて野球に専念できる環境で素質が開花。巧打の外野手として4度の首位打者と3度のMVPに輝き、日本代表の中心選手となった。

 だが、女子プロ野球はその後、経営難に陥る。三浦は20年末、「楽しく野球を続けたい」と退団。阪神から声を掛けられたのは、新たな場所を探していた時だ。

女子プロ野球の運営機構は無期限休止

縦じまのユニホームでプレーする三浦。「女の子がずっと野球を続けられる時代」を目指している(昨年6月)
縦じまのユニホームでプレーする三浦。「女の子がずっと野球を続けられる時代」を目指している(昨年6月)

 女子プロ野球の運営機構は21年末、無期限休止を発表した。三浦は11年間のプロ生活で、女子野球を取り巻く環境の厳しさが身にしみた。リーグが開幕した10年度は観客動員数が6万人を超えたが、3万5000人前後に落ち込んだシーズンもあった。見せるプレーを意識し、自分の成績を上げることに集中した。

 実績に誇りを持ちながらも、まだ少ない女子の野球選手であることに複雑な思いも抱えてきた。小さい頃から野球をやっていると自信を持って言えなかった。美容室でスポーツの話題になると、テニス選手で通すこともあった。「野球選手ですって言うと『すごいですね』っていかにも珍しがられるから、あえて言わなくていいかなって」

「女子野球を知ってもらいたい」

 プロとアマチュアの両方を経験した今、野球への向き合い方は再び変わりつつある。昨年は関西で無敗も、日本一を争う全日本選手権では8強止まり。読売巨人軍が女子チーム創設へ始動したというニュースに触れ、刺激を受けた。

 「やっぱり勝ってこそ注目される。自分のことよりも、女子野球をたくさんの人に知ってもらうために高い目標を持ってやりたい」

 自分のワンプレーが後に続く選手たちの道を作る。「女の子たちが、ずっと野球を続ける時代になってほしい」と願い、きょうもバットを振る。(上田真央)

女子野球の国内主要大会とは

 全国のクラブ、大学、高校が頂点を競う8月の全日本選手権、クラブ日本一を決める10月の全日本クラブ選手権がある。昨年の全日本選手権には32チームが参加した。

 このほか、春から秋に各地方連盟がリーグ戦を実施。関東は「ヴィーナスリーグ」、関西は「ラッキーリーグ」で、各カテゴリーに分かれて対戦。昨年、中部地方に「センターリーグ」が誕生した。

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2697116 0 野球一般 2022/01/23 14:13:00 2022/01/23 14:13:00 2022/01/23 14:13:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/01/20220123-OYT1I50023-T.jpg?type=thumbnail

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