「親日国」という言葉は定義が曖昧で記事で使うことをたびたび躊躇(ちゅうちょ)してしまうが、南太平洋の島国トンガはその一つと言っても差し支えないだろう。トンガを訪れた日本人が想像以上の歓待を受けたという話はしばしば耳にする。トンガは南太平洋で唯一の王制が残る国であり、王室と日本の皇室の親密な交流が、日本への親しみを下支えしているといえるかもしれない。
親日ぶりを象徴する事柄の一つがそろばんだ。親日家として知られた国王ツポウ4世(故人)がその教育効果に着目し、そろばん技術を学ぶために日本に留学生派遣を開始した。国内の学校はそろばんを算数教育の一環として取り入れている。選択科目として日本語を学ぶことも可能だ。
伝統的な親日国であることは間違いないが、近年は他の南太平洋諸国の例に漏れず、中国が巨大経済圏構想「一帯一路」などを通じて進出を進めている。2006年にトンガの首都ヌクアロファで起きた大規模暴動によって、ビジネス街や官庁街が破壊された際、中国が財政面で再建を支援したことで両国の接近は進んだ。中国の王保東・前駐トンガ大使は「必要な時にトンガのために歩み寄る国は中国だけだ」と自賛気味に語っている。