ベリーダンスを踊った教師、解雇され離婚も エジプトで女性の権利めぐる議論に発展

ヨラン・ネル、BBC中東特派員

A belly dancer during a promotional event for Egyptian tourism

画像提供, Getty Images

画像説明, ベリーダンスの起源はファラオの時代にさかのぼるとされる。写真はエジプトの観光イベントで踊るベリーダンサー

エジプトで先月、ベリーダンスを踊った女性教師が解雇される出来事があった。この教師のダンス動画は拡散され、女性の権利や社会的に保守的な同国の価値観をめぐる国民的議論が巻き起こっている。

アヤ・ユセフさんはナイル川の船上で行われた職場の社交イベントで、ベリーダンスを踊った。同僚はその様子を無断で撮影した。ユセフさんはその後解雇され、夫から離婚すると告げられた。

動画には、男性教職員と一緒に音楽に合わせて踊る女性の姿が映っている。

ベリーダンスの起源はファラオの時代にさかのぼるとされる。しかし、現在のエジプトでは女性が人前で踊ると顰蹙(ひんしゅく)を買うことが多いという。

「恥ずべき行動」と批判

イスラム教徒が使用するヘッドスカーフをかぶり、長袖のドレスを着たユセフさんが日中にナイル川で開かれたイベントに参加する様子を捉えた動画は、欧米の基準からすれば非常におとなしいものに見える。

ところが、動画がこの1週間でアラブ諸国のソーシャルメディアで広く共有されると、エジプトの保守派の間で反発が起きた。

ユセフさんが恥ずべき行動を取ったとの批判の声が上がった。ある人は、「私たちが生きている哀れな時代を明示している!!何もかもが許されるという時代をね」とツイートした。

別の人は、「エジプトの教育が低水準に達している」として、関係当局の介入を求めた。

その後、ユセフさんは数年間勤務していたナイル川デルタに位置するダカリーヤ県の小学校から解雇された。ユセフさんはアラビア語を教えていたという。

自殺を考えたことも

ユセフさんは今後は2度と踊らないと誓っている。そして、自殺を考えたこともあると語った。

「ナイル川の船上での10分間が、私の命を奪った」と、ユセフさんは記者たちに言った。

エジプトの女性の権利擁護派は、ユセフさんは悪いことは何もしていない、魔女狩りの犠牲者だと強く訴えた。

別の学校の教頭は、ユセフさんへの支援と個人の自由を守るため、自分が娘の結婚式で踊ったときの写真をソーシャルメディアに投稿した。

エジプト女性人権センター代表のニハド・アブ・クムサン博士は、ユセフさんに同センターでの仕事を提供し、解雇に対する法的申し立てを行うため教育省から発行されたユセフさんの契約書を持参するよう求めた。

その後、地元当局はユセフさんを新たな学校に赴任させることを決めた。人権センターの動きがきっかけで地元当局が考え直した可能性がある。

ユセフさんは今回の出来事について、「プライバシーの侵害」だと主張。公的機関や生徒の前で踊ったわけではないとし、動画を撮影した人物を告訴する方針だと述べた。