世界経済、今年の成長率は4.1%に減速か 「暗い見通し」と世銀

Workers at a farmers market in India

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世界銀行は11日に発表した世界経済見通しで、2022年の世界経済の成長率が、昨年の5.5%から4.1%に減速する見通しを示した。デイヴィッド・マルパス総裁は世界経済の「見通しは暗い」と警告した。

新型コロナウイルスのパンデミックの影響が引き続き、特に途上国で経済成長を妨げるとみられている。また、各国政府が補助金を削減していることや、需要の回復が遅れていることなどを減速の理由に挙げた。

しかしマルパス総裁は、最大の懸念は世界で広がる不平等だと指摘。BBCの取材に対し、「構造に組み込まれている不平等が、最も成長の足を引っ張っている」と述べた。

特に、貧しい国々がインフレ対策による経済的な打撃を受けているという。

「経済力の弱い国々の見通しは今後もさらに落ち込んでいくだろう。これが不安定さにつながっていく」

世銀の見通しによると、アメリカやユーロ圏、日本などの先進国では、パンデミック中の経済的打撃は2023年までに回復する見込み。一方、途上国や新興国の経済は同時期になっても、パンデミック前と比べて4%低い水準にとどまるとみられている。

マルパス総裁はまた、富裕国の経済刺激策が世界的なインフレを招き、不平等を拡大していると批判。アメリカを含む多くの国が、物価上昇を抑えるために政策金利の引き上げを検討しているが、借り入れコストの拡大が、経済力の弱い国々の経済活動に損害を与えるだろうと警告した。

「利上げの問題点は、変動金利の資金を必要としている人々に悪影響を与えることだ。これは新規事業や、女性が所有する企業、途上国の企業などが挙げられる」

Woman buying fruit and vegetables

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世銀は、2021年の世界経済について、大恐慌以降の80年で最も力強い回復を見せたとした。だが、新型ウイルスの変異株や物価上昇などによって、この勢いは2022年には衰えていくと予想。サプライチェーン危機や経済刺激策の縮小もリスクになると警告した。

また、2021年後半のデルタ株とオミクロン株による成長の減速は、すでに昨年6月時点での世銀予想よりも大きかったと説明。その上で、2022年の「大きな減速」を受けて、2023年の成長はさらに弱まり、3.2%にとどまるだろうとした。

今年の世界経済の成長率見通しを引き下げているのは主に中国とアメリカで、中国は昨年の8%から5.1%に、アメリカは5.6%から3.7%にそれぞれ減速する見込み。

ユーロ圏の経済成長率も、5.2%から4.2%に縮小する見通しだ。

一方、インドでは8.7%の成長が見込まれており、昨年の8.3%からわずかに加速する。

しかし、多くの新興市場は引き続き、ワクチン接種率の低さなどを背景に苦労することになるとみられている。

たとえばラテンアメリカ・カリブ海地域の今年の経済成長率見通しは2.6%と、昨年の6.7%から大きく減速する。

World Bank head David Malpass

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画像説明, 世界銀行のデイヴィッド・マルパス総裁

世界経済フォーラム(WEF)も11日、各国の経済回復にむらがあることで、気候変動などの世界的な問題での協力が難しくなっていると警告した。

「各国間、そして国内での格差が拡大することで、新型ウイルスと変異株の制御が難しくなるだけでなく、世界が見過ごせない共通の脅威に対する共同作業が滞るばかりか、衰退する危険性が生まれている」