オミクロン株で強まる第6波の懸念 下方修正のGDP

内閣府などが入るビル=東京都千代田区(桐原正道撮影)
内閣府などが入るビル=東京都千代田区(桐原正道撮影)

内閣府が8日発表した7~9月期の国内総生産(GDP、季節調整値)改定値は、物価変動を除く実質で前期比0・9%減、このペースが1年続くと仮定した年率換算で3・6%減だった。新型コロナウイルスの感染再拡大で個人消費などが下振れした影響で、11月15日発表の速報値(前期比年率3・0%減)から下方修正された。新変異株「オミクロン株」の出現で感染「第6波」の懸念が強まる中、足元の景気持ち直しを維持できるかが問われる。

項目別にみると、GDPの半分以上を占める個人消費が速報値段階の前期比1・1%減から1・3%減に下方修正された。公共投資は1・5%減から2・0%減、民間在庫の実質GDPへの寄与度も0・3%増から0・1%増に低下した。

景気実感により近いとされる名目GDPは、速報値の前期比0・6%減から1・0%減、年率換算では2・5%減から4・1%減にそれぞれ下方修正された。

農林中金総合研究所の南武志主席研究員は7~9月期の改定値を「景気の頭打ち感がより強まった内容」と指摘する。下方修正で潜在的な供給力と需要の差を示す需給ギャップ(GDPギャップ)は、4~6月期の約22兆円から7~9月期は約27兆円(内閣府試算)に拡大した。

個人消費が低迷したのは夏場の感染「第5波」による緊急事態宣言でサービス消費が低迷したのに加え、コロナ禍の長期化で家電製品などの「巣ごもり需要」も一巡してしまったのが原因だ。コロナ禍が起こした世界的な半導体不足や海外からの部品の供給遅れが重なって、設備投資や輸出にも下押し圧力が強まった。

ただ、ワクチン接種の進展で新規感染者数は落ち着いており、緊急事態宣言が全面解除された9月末から景況感は改善している。

内閣府が8日発表した11月の景気ウオッチャー調査は、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整値)が前月比0・8ポイント上昇の56・3となり、3カ月連続で改善した。

10~12月にはこれまで押さえ込んできた消費意欲が噴き出すリベンジ消費も期待され、実質GDPは「前期比年率4%程度の高成長が見込まれる」(南氏)。

こうした中、懸念材料はオミクロン株の拡大だ。欧州などの急速な感染拡大をみれば、来年1~3月期は国内でも再び新規感染者数が増える恐れがある。日本経済が新たな回復軌道に乗るには、夏場のような医療逼迫(ひっぱく)を防ぎコロナと共存するウィズコロナ経済を続けられるかにかかっている。

(永田岳彦)

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