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新型コロナウイルス感染症対策として有望視される経口治療薬(飲み薬)の開発が大詰めを迎えている。国内では、米メルクが製造販売の承認を申請したほか、塩野義製薬が年内の申請を目指す。有望な飲み薬は、世界でも数種類に絞り込まれており、安定供給につながる国産飲み薬への期待が高まっている。
塩野義製薬の手代木功社長は、7日の読売新聞のインタビューで「日本国民の皆さんが必要としている薬を届けたい」と力を込めた。年内の承認申請に間に合わせるため、安全性の確保を前提に、中間解析のデータで申請することも選択肢に入れている。
塩野義が開発を進める新型コロナの飲み薬は、ウイルスの増殖に必要な酵素の働きを阻害し、重症化を防ぐ仕組みだ。発症初期に服用することで、早期に回復できる効果が期待される。
手代木氏は「自宅で飲めるような簡便な経口薬は絶対に必要とされている」として、開発に多くの研究者を投入した。薬に使われる化合物の特定には通常5年かかるとされるが、9か月で成功した。国内で承認され次第、販売できるよう準備を急いでいる。
海外勢では、米メルクの日本法人MSDが今月3日、飲み薬「モルヌピラビル」の製造販売の承認を厚生労働省に申請した。政府は、承認を前提に160万回分を調達することでメルクと合意した。米ファイザーも、日本での申請に向けて協議中という。
オミクロン対応にも着手
塩野義製薬の手代木功社長のインタビューでの主な発言は次の通り。
――海外勢よりワクチン開発が遅れた原因は。
「申し訳なく、悔しい思いだ。国として平時からの準備がなかった。英国はヘルスケアに力を入れていたし、米国も感染症対策に巨額を投資している」
――岸田首相は国産ワクチンや治療薬の開発・製造に投資する考えを表明した。
「新型コロナウイルスのような急性感染症は、流行しなければ薬が売れず、ビジネスとして成立しにくい。流行しなくても、薬の開発を続けられるよう支援していただけるのは大きい」
――オミクロン株が広がりつつある。
「対応するワクチン開発に着手した。治療薬でも有効性を確認する。こうした変異株にも国内企業で対応できるよう、国産ワクチンの技術を磨いておく必要がある」