「預言者ムハンマドを冒涜」とうわさされた男性、集団暴行受け死亡 パキスタン

People in Pakistan hold a vigil for Priyantha Diyawadanage on Sunday in protest of his violent mob death

画像提供, EPA

画像説明, スリランカ人男性の死はパキスタンとスリランカで抗議行動を巻き起こした。写真は5日にパキスタンで開かれた追悼集会の様子

パキスタン・パンジャーブ州で3日、イスラム教の預言者ムハンマドを冒涜(ぼうとく)したとして、スリランカ人男性が群衆に残忍な方法で殺害された。パキスタンとスリランカでは抗議が巻き起こり、パキスタンの首相がこの自警団的な暴力行為を非難する事態となっている。

パンジャーブ州シアールコートで工場長を務めていたプリヤンタ・ディヤワダナゲさん(48)は3日、群衆から暴行を受けて殺害され、遺体に火をつけられた。

パキスタンのイムラン・カーン首相は、これまでに100人以上が逮捕されたと明かし、パキスタンにとって「恥辱の日」だと述べた。

スリランカにいる遺族はBBCに対し、絶望していると語った。

男性の妻ニルシ・ディサナヤカさんはパキスタンとスリランカの両政府に対し、「夫と私の2人の子どもたちに正義をもたらす」ために、事件について徹底した調査を行うよう求めた。

「インターネット上で、夫が襲われているのを見た。(中略)あまりに非人道的だった」

Nilushi Dissanayaka wears a face mask while speaking to the BBC in an interview
画像説明, ニルシ・ディサナヤカさんは夫が殺害され動揺している

先週末、リンチの様子をとらえた複数の動画がソーシャルメディアで拡散された。動画には、激高した群衆がディヤワダナゲさんを職場から引きずり出し、殴り殺す場面が映っていた。

群衆はその後、遺体を燃やした。中には、遺体とセルフィー(自撮り写真)を撮る人もいた。

なぜ群衆は暴力的になったのか

地元警察の本部長によると、ディヤワダナゲさんがムハンマドのポスターを破り、冒涜行為をしたとするうわさが広まり、暴力が始まったという。

しかし、ディヤワダナゲさんを助けようと現場に駆けつけた同僚がAP通信に語ったところによると、ディヤワダナゲさんは建物の掃除のためにポスターをはがしただけだった。

ディヤワダナゲさんの妻も冒涜があったとする主張に反論している。

「夫が工場でポスターを破ったという報道を全面的に否定する。夫は無実だった」と、妻はBBCに語った。

「彼はパキスタンの生活環境について十分に承知していた。イスラム教の国なので。そこですべきではないことを自覚していたからこそ、11年間も働いてこられた」

パキスタンではムハンマドへの冒涜は激しい論争を招く犯罪行為であり、根も葉もない言いがかりであっても抗議行動や、加害者とされる人物への集団暴行を引き起こすことがある。

人権派の人々は、少数派(マイノリティー)がしばしばこうした言いがかりの対象になると主張している。

首相の反応

3日に発生し、数百人が関与したとされるこの凶悪な殺人事件は、パキスタン国民に衝撃を与えた。

カーン首相は自警団的な暴力行為を非難し、「責任を負う者は全員、法の完全な厳しさをもって罰せられる」とツイートした。

また、「我が国の怒りと恥辱をスリランカの人々に伝えるため」スリランカのゴタバヤ・ラージャパクサ大統領と話をしたと明らかにした。

スリランカ当局は国内のイスラム社会での動揺と報復を恐れ、事件について完全なコメントは出していない。

ディヤワダナゲさんの遺体は6日にスリランカへ戻される予定だが、首都コロンボでは抗議が行われるとの見方もある。