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東京の空の玄関口・羽田空港(東京都大田区)。構内の案内図が載ったパンフレットを手に取ると、第1ターミナル1階・到着ロビーの一角に、小さく「神社」の文字があった。木立に囲まれて静かにたたずむイメージの神社が、なぜ近代的なビルの中にあるのだろう? (水戸部絵美)
パンフレットを頼りにロビーを歩くと、「航空神社」と書かれた案内表示を見つけた。目立たないので、うっかり見過ごしてしまいそうだ。細い通路に入ると、奥に「羽田航空神社」があった。
神社の“境内”は、小さな会議室のよう。厳かにレッドカーペットが敷かれ、祭壇にはお茶やお菓子などの供え物があり、その手前にさい銭箱が置かれている。そばの立て札を読むと、「今後の航空界の躍進と航空安全輸送の
神社は毎日午前8時から午後7時まで、誰でも参拝できる。わかりにくい場所にあるのに、参拝客は後を絶たない。福岡の実家から飛行機で着いたばかりだという中野区の会社員女性(53)は「無事に帰省できるよう、よく手を合わせに来ています」と笑顔で話していた。
空港を運営する「日本空港ビルデング」の広報担当・清水美花さん(29)によると、第1ターミナルの前身・旧ターミナルの屋上に1963年、羽田航空神社が建立された。1年後に迫った東京五輪を機に空港の拡張工事が次々に計画される中、一般財団法人「日本航空協会」(港区新橋)のビル屋上にあった「航空神社」から分霊したという。93年に第1ターミナルが完成すると、神社は1階に祭られることになった。
当初は、空の安全を願って、旅行客やパイロット、客室乗務員が出発前に参拝に訪れることが多かったという。しかし2000年代に入ると、物珍しさから雑誌やインターネット記事などで取り上げられ、神社仏閣巡りが好きな人たちの間でじわりじわりと知られるように。確かに取材中も「落ちませんように」とパイロット試験の合格を祈願しに来た航空会社員や、受験生とおぼしき制服姿の女子高生が手を合わせていた。
「いまや知る人ぞ知るパワースポットなんです」。清水さんはそう胸を張る。
新型コロナウイルスの感染が拡大する前は、年間8000万人以上が利用していた羽田空港。しかし長引くコロナ禍で便数はなかなか元に戻らない。そこへ新たな変異株「オミクロン株」が見つかり、政府が先月末、全世界からの外国人の新規入国を停止するなど、空港にとって暗いニュースが続く。
清水さんは「飛行機に乗らなくても、神社へお参りに来てもらって空港を楽しんでほしい」と気丈に話す。早く以前のような日常を取り戻せるよう、私も神頼みでもしてみようかしら。