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NECは、国内外の大規模農園の作業を支援する人工知能(AI)の開発に乗り出した。今年6月からは小麦で実証実験を始めており、衛星写真や土壌センサー、農機で集めたデータを分析。肥料のまき方や収穫時期を細かく調整し、収穫量の向上を図る。新規就農者の参入を促し、高齢化による担い手不足の解消や農作物の安定供給につなげる。
実証実験は農機の輸入・販売を手がけるエム・エス・ケー農業機械と共同で、北海道芽室町にある約170ヘクタールの農場で進めている。センサーで土壌に含まれる水分量や日照時間などの膨大なデータを集め、AIが最適な肥料の散布時期、量を判断する。衛星やドローンで生育が遅れている区画を把握して追肥することで、収穫量を増やす。
広大な土地で栽培することが多い小麦は、区画によって生育条件が変わり、肥料の量や収穫のタイミングを細かく調整する必要がある。これまで農家の「経験と勘」に頼ってきた判断材料をAIが分析することで、経験が浅くても精密な調整ができるようになる。
実証実験は2年間で、効果が確認されれば2023年以降に農家へのサービス提供を始める。センサーをはじめとする機器とAI活用のノウハウ提供を含めた年間利用料は、畑1ヘクタールあたり数千円程度を想定する。広大な耕作地を抱え、AI導入のメリットが大きい米国や豪州といった農業国でも利用を働きかける計画だ。
国内で深刻化している高齢化と後継者不足の問題への貢献も期待される。NECは「新規就農者や企業などの農業参入を後押ししたい」(担当者)としている。