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新型コロナウイルス禍の中、政治資金パーティーをオンラインで開催する動きが広がっている。総務省などが公表した昨年分の政治資金収支報告書でも、多くの政治団体が映像配信の費用を支出計上していた。「密」を避けながら資金調達を図る方法として定着する可能性があるが、課題も少なくない。
ルール曖昧 透明性課題も
■前年並み維持
「コロナ禍でも、年に1度の支援者との交流ができてよかった」。昨年7月、初めてオンラインを併用した政治資金パーティーを開いた自民党麻生派「志公会」の担当者はそう振り返った。
会費を支払った約7000の個人や企業などのうち、会場の東京都内の高級ホテルに集まったのは約1000人。残りは会場の様子を中継するURLを伝え、自宅などから参加してもらった。配信費用など負担も生じたが、収入は約2億1700万円と前年並みを維持した。
総務省が所管する政治団体のパーティー収入は計63億8000万円で、前年比28%減だった。「映像配信業務費」や「撮影用照明」などの経費を支出に記載する団体が多く、オンラインに活路を見いだす思惑がうかがえる。ある立憲民主党議員の秘書は、「高齢者や障害者も移動することなく、気軽に参加してもらえるメリットがある」と話す。
■「一体感乏しい」
一方、今年7月にオンラインも使ったパーティーを開いた自民党衆院議員の事務所担当者は、「思ったより手間暇がかかった」と語り、「オンラインでは一体感も得にくく、気持ちが離れてしまう支援者もいるかもしれない」とこぼした。
政治資金規正法では、年間5万円超の献金は氏名などを収支報告書に記載する義務が生じるが、パーティーの場合、支払った会費が1回20万円以下であれば購入者を記載する必要がない。事業の「対価」として収入を得るという点で献金とは区別されているためだ。
ある自民党参院議員は、「動画配信だけで『対価性がある』と言えるのか」と疑問視し、「オンライン化に踏み切れない同僚議員も多い」と打ち明ける。
■記載義務なし
収支報告書への記載方法を巡り、ルールの曖昧さも浮かび上がる。
オンライン併用のパーティーを開いた参院議員は、約1600万円の収入を得たが、パーティー券の購入者として計上したのは会場に集まった個人や団体のみで、オンライン参加者の数は記載しなかった。収支報告書が実態を反映していない状況が起きている。今後は完全なオンラインで開催されるケースも予想されるが、総務省は「人を集めない会合はパーティーと解釈するのが難しい」とする。このため、20万円超の会費を支払った場合でも、氏名などを収支報告書に記載する義務が生じないことになる。
富崎隆・駒沢大教授(政治学)は「オンライン化は国民の政治参加を促進する可能性がある。政治資金の公開を原則とする政治資金規正法の趣旨に照らし、オンラインでのパーティーなどの収支を透明化するルール作りを与野党で進めるべきだ」と話している。