中国テニス選手の動画、国営新聞がツイッターに投稿
中国のテニス選手、彭帥さん(35)が前副首相から性的暴行を受けたと告発した後、安全が危ぶまれている問題で、国営メディアは21日、彭さんが北京のテニス大会にゲストとして登場したとする動画をツイッターに投稿した。前日にも、彭さんが友人らと外出した場面だとする動画を投稿した。
国営系の新聞、環球時報の胡錫進編集長は21日、ツイッターに動画を投稿し、「彭帥が日曜日朝、北京で開かれた10代のテニス大会決勝の開会式に姿を見せた」と説明した。撮影したのは同紙の写真記者だとした。
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ロイター通信は、大会主催者も彭さんの写真を、中国のソーシャルメディアの微信(ウィーチャット)に投稿したと伝えた。
前日には食事中とされる動画
環球時報の胡編集長は20日にも、彭さんがコーチや友人らとレストランで夕食を取っている場面とされる動画2本を投稿。「この動画の内容から、北京時間の土曜日(20日)に撮影されたことは明らかだ」とツイートした。
女子テニス協会(WTA)のスティーヴ・サイモン最高経営責任者(CEO)はこの動画について、彭さんの安全を示す証拠としては「不十分だ」と述べた。
「彼女の姿を見られるのはよいことだが、彼女が自由で自己決定権があるのか、強制や外部からの介入なしに自分で行動できているのか、まだ明確ではない」
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サイモンCEOは中国の秦剛駐米大使に文書を送り、「緊急の問題」の解決のため、大使が中国政府高官らと協議するよう求めたという。
また、彭さんの中国出国を許可するか、他者がいない環境でビデオ回線でサイモンCEOと直接通話させるよう要求したと述べた。
WTAは、彭さんが今月2日にソーシャルメディアの微博(ウェイボー)で、張高麗前副首相(75)から性的関係を「強要された」と訴えて以来、彼女と連絡を取れていない。
英政府が懸念
こうしたなか、英政府はこの問題を注視しており、「極めて心配している」と表明した。
外務・英連邦・開発省(FCDO)の報道官は、「中国当局は彼女の安全と居場所について、検証可能な証拠を提供すべきだ」と述べた。
「影響を恐れずに声を上げることは、すべての人に認められるべき行為だ。性的暴行の訴えは、世界のどこであろうと、調査されるべきだ」
動画の疑問点
WTAは中国テニス協会から、彭さんが北京にいて安全だと連絡を受けている。ただ、サイモンCEOは19日、その裏付けはないと話した。
環球時報が20日に投稿した動画については、日付が不鮮明にされていると、BBCのケリー・アレン中国メディアアナリストが疑問視している。
BBCのスティーヴン・マクドネル中国特派員は動画をリツイートし、「これはやらせなのか? 誰が環球時報に動画を渡したのか? 誰が撮影したのか? 多くの疑問がある」と書いた。
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Twitter の投稿の終わり, 2
フェデラー選手も発言
スイスのスター、ロジャー・フェデラー選手も新たに、彭さんの身を案じる発信をした。
「彼女が安全でいることを願っている。テニス界は彼女のために結束している」
「すぐに彼女についてよい知らせがあることを願っている」
テニス界では多くの選手や関係者が懸念の声を上げている。セリーナ・ウィリアムズ選手、ノヴァク・ジョコヴィッチ選手、大坂なおみ選手らもツイッターなどで発信している。
テニス以外のスポーツ選手や俳優、政治家らも、彭さんの居場所に関して説明を要求している。多くの人たちが、「#WhereIsPengShuai」(彭帥はどこに)のハッシュタグと、彭さんの写真を使ってツイートしている。
中国の大スター選手
彭さんは女子ダブルスの元世界ランキング1位。グランドスラム(4大大会)のダブルスで2回優勝している(2013年ウィンブルドン、2014年全仏。ペアの相手はともに台湾の謝淑薇)。
シングルスでも2011年、ランキングを最高14位まで上げた。2014年の全米オープンでは準決勝まで勝ち進んだ。2020年3月以降はWTAツアーの試合に出場していない。
彭さんは性暴力被害を告発する際、証拠を示すことはできないと認めていた。中国で有力政治指導者に対し、今回のような訴えがなされたのは初めて。中国の#MeToo運動としては、最も注目を集める事案となっている。
告発された張さんは、訴えに反応していない。張さんは2013~2018年に副首相を務め、習近平国家主席に近かった。