Amazon7~9月純利益5割減 通販減速・人件費上昇響く
【シリコンバレー=佐藤浩実】米アマゾン・ドット・コムが28日発表した2021年7~9月期決算は売上高が前年同期比15%増の1108億1200万ドル(約12兆5700億円)、純利益が同50%減の31億5600万ドルだった。新型コロナウイルス禍で急拡大した前年の反動でインターネット通販事業の伸びが減速したほか、人件費や輸送費などがかさみ6四半期ぶりの減益となった。
7~9月期の売上高は事前の市場予想(1115億5100万ドル)を下回った。伸び率が20%を下回るのは19年前半以来だ。直営のネット通販事業の売上高が499億4200万ドルとなり、前年同期比で3%の伸びにとどまったのが響いた。
ブライアン・オルサブスキー最高財務責任者(CFO)は電話会見で「消費者はパンデミック前の購買パターンに戻り始め、旅行や(外食など)サービスへの支出を増やしている」と指摘した。アマゾンの電子商取引(EC)プラットフォームに出品する外部事業者から受け取る各種の手数料収入は19%増の242億5200万ドルだった。
労働力不足で賃金上昇、配送に影響も
売上原価や物流網の整備にかかる費用の増加も目立った。米国などで拠点の拡張を続けており、アマゾンの従業員数は9月末時点で146万8000人と6月末より13万3000人増えた。一方で労働市場では需給のミスマッチが深刻になっており「企業が働き手を求めて競争した結果、賃金が上昇し、報奨金の支払いも増えた」(オルサブスキー氏)。
米国のアマゾンでは梱包や配送業務に携わる従業員の平均的な最低時給が18ドルを超えており、シフトに応じて1時間あたり3ドルを追加で払っている地域もある。それでも拠点によっては十分な労働力を確保しきれず、効率の悪い遠距離配送を迫られる事態も起きた。生産性の低下やオペレーションの混乱により、10億ドル以上の追加コストが発生したという。
クラウドコンピューティング事業の「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」の売り上げは39%増の161億1000万ドルで堅調な拡大が続いた。「アマゾンプライム」を中心とするサブスクリプション(継続課金)型サービスの売上高は24%増の81億4800万ドルと予想を上回ったが、主力のネット通販事業の減速とコスト増の影響が大きかった。
年末商戦と重なる10~12月期も人材や物流の制約が重荷になる見通し。アンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は声明で「労働力不足や賃金上昇、世界的なサプライチェーンの問題、運賃・輸送費の上昇に対処するため数十億ドルの追加コストが発生する」と指摘した。商戦期の販売を維持するため、輸入品に関して相対的に処理能力の余裕がある港の利用を増やしている。
10〜12月期の会社全体の売上高は1300億〜1400億ドルになるとみている。前年同期と比べた伸び率は最大でも12%にとどまり、市場予想の1421億ドルに届かない見通しだ。28日の時間外取引でアマゾン株は終値を約4%下回って推移している。