『それでも選挙に行く理由 WHY BOTHER WITH ELECTIONS?』アダム・プシェヴォスキ著(白水社) 2090円
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「ルールある紛争」の意義
評・国分良成(国際政治学者・前防衛大学校長)
「民主主義は最悪の政治形態と言われる。これまでに試みられたすべての政治形態を除けばの話だが」。チャーチル英元首相の有名な格言は、本書の論旨に近いものがある。
だが今日の世界では、権威主義体制の勢いが増し、逆に民主主義体制は揺らいでいる。米国における社会の分断や議会襲撃、EUの低迷、ミャンマーやアフガニスタンでの事態等々。
民主主義の本質は市民の政治参加の拡大にあり、それは選挙に集約される。しかし選挙に関しても多くの疑念が顕在化している。ポーランドに生まれ米国で
投票した候補者が落選する可能性も高く、当選しても公約はほぼ裏切られ、カネが飛び交う不正選挙もあり、非難合戦もあり、与党に有利なように選挙制度が作られていることも多く、選挙はエリートの再生産にすぎない等々。
それでも著者は選挙に大いなる意義があるとの論を張る。「すべての人が同時に統治者にはなれないので、せめてもの次善の策は、誰によってどのように統治されるかを選択することができ、好ましくない政府を排除する権利を保有することなのである」と。つまり、選挙とは「ルールのある紛争」であって、投票用紙は「紙でできた石つぶて」なのだ。
対立する政治勢力が選挙結果に従い、敗者が次回を期すのは、民主主義の「奇跡」だという。過去35年、先進国で民主主義が崩壊した国がないとのことだが、そのことの意味は大きい。
中国では次期指導者を決めるルールがない。だからその前に必ず隠微な権力闘争が起こる。そこに国民は不在どころかおちおち
さあ皆さん、来週の総選挙には必ず投票所に行き、貴重な一票を投じましょう。粕谷祐子、山田安珠訳。