イギリス漁船、フランスが拿捕 漁業権めぐり対立深まる

File pic of a French fisherman returning after protests in Jersey's waters

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画像説明, イギリスと英王室属領のジャージー島がフランス漁船に漁業認可を与えなかったことをきっかけに、両国の対立が深まっている。写真はジャージー島近海での抗議行動から戻ったフランス漁船

イギリスのトロール漁船1隻が27日、フランス当局に拿捕(だほ)され、別の1隻が罰金を科された。両国はブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)後の漁業権をめぐり対立を深めている。

フランスのアニック・ジラルディン漁業相はツイッターで、2隻はル・アーヴル港沖で検査を受けていたと説明した。ホタテ漁の時期に実施される通常の検査だったという。

うち1隻は指示にすぐに従わなかったため、罰金が科された。もう1隻はフランス領海での漁業許可を持たずにセーヌ湾で漁をしていたため、埠頭(ふとう)に係留し、「司法当局に引き渡した」という。

フランスは、イギリスと英王室属領のジャージー島が9月、フランス漁船に漁業認可を与えなかったことを批判。ブレグジット協定に違反していると主張している。

その上で、11月2日までに漁業権をめぐる合意が形成されない場合、イギリス漁船やトラックへの検査を厳格化すると発表。また、英仏海峡の島への電力供給を断つこともできると警告していた。

一方、イギリス政府は27日、フランスがイギリス漁船の入港を阻止すると述べていることについて、国際法と通商協定に違反すると反発した。

イギリスのブレグジット担当相を務めるデイヴィッド・フロスト氏は、フランスの態度に「失望している」と話し、イギリス側はフランスの計画について「早急に確認」を取っている状態だと説明した。

イギリスに最後通告

フランスは27日、1週間後の11月2日から以下の「対象を絞った措置」を行うとイギリスに最後通告を行った。

  • イギリスの漁船がフランスの港で陸揚げすることを阻止する
  • イギリス製品に対する国境での検査や衛生検査を拡大する
  • イギリス漁船に対するセキュリティーチェックを強化する
  • 英仏海峡を行き来するトラックについても検査を強化する

また、ジャージー島への電力供給を切断するなどのさらなる制裁も検討しているという。ジャージー島の電力は95%が、フランスから3本の海底ケーブルを使って供給されている。

フランス政府は、「フランスは漁業への支援を継続する」と発表。イギリスからの返答を「数日以内に」期待していると述べた。

フロスト・ブレグジット担当相は、「フランスがイギリスの漁業や広範囲の貿易業界を脅迫する必要があると感じたことに失望している」と述べた。

「フランス政府からこの件に関する正式な通達がないため、フランスの計画について早急に確認を行っている。その上で、どんな措置が必要なのかを検討していく」

「対抗措置取る」

英首相官邸の報道官は、フランスによる制裁の脅しは「残念かつ不適切なものだ」、「近しい同盟国、友好国に期待しているものではない」と語った。

「フランスが措置を検討しているという施策は、通商協力協定や広範囲の国際法にかなったものではないようだ。強行された場合には、適切かつ調整された対抗措置を講じる」

その上で、欧州連合(EU)とフランス政府双方に懸念を表明すると述べ、イギリスはEUの漁船の98%に領海での漁業許可を与えていると主張した。

イギリスとEUとの協定では、フランスの漁業者がイギリスやジャージー島周辺海域での漁の許可を得るには、同海域での漁業歴を明らかにする必要がある。

しかしフランスの漁業関係者からは、許可の取得が難しく、排除されていると不満が出ているという。