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真鍋氏ノーベル賞で光、気候モデラーたちの試行錯誤

ナショナル ジオグラフィック

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 10月5日、気候モデル開発の先駆者である真鍋淑郎氏とクラウス・ハッセルマン氏が、理論物理学者のジョルジョ・パリージ氏とともにノーベル物理学賞を受賞した。ノーベル物理委員会のトールス・ハンス・ハンソン委員長は、「気候に関する私たちの知識が、観測結果の綿密な分析に基づくしっかりした科学的基盤の上に成り立っていること」を称えるものだと語った。

気候モデラー(モデル開発者)は、地球科学や惑星科学の専門家であり、応用物理、数学、計算科学分野の経験をもつことも多い。彼らは物理学と化学を用いて方程式を作成し、スーパーコンピューターに入力し、地球や他の惑星の気候をシミュレーションする。

だが、気候変動を否定する人々は、長年にわたってモデルを気候科学の弱点と見なしてきた。気候モデルが導くのは必然的に予測であることから、検証不可能であり、不備なデータが不確実な結果をもたらしているという汚名を着せられていた。

 1990年、ナショナル ジオグラフィック誌の記事は、こう書いている。「モデリングはまだ初期段階であり、現在の気候の詳細を再現することすらできないという批判がある。モデラーたちはその点を認め、モデルを微調整すれば、予測は必然的に変動すると述べている」

しかし、その後に行われた分析で、ごく初期のモデルでも、その多くが地球温暖化をかなり正確に予測していたことがわかった。今日ではコンピューターの能力が向上し、モデル作成プロセスにも次々に改良が加えられ、モデラーたちは自らの研究成果に自信を深めている。

「気候科学を完全に否定する声は、確実に小さくなりました。予測が非常に正確だったことがわかったからです。現時点では、気候科学を否定することはますます難しくなっています」と、『Climatology versus Pseudoscience: Exposing the Failed Predictions of Global Warming Skeptics(気候学vs疑似科学:地球温暖化を疑う人々の誤った予想をあばく)』の著者であるダナ・ヌッチテリ氏は話している。

1990年の記事は、現代の気候モデル開発の父とされる真鍋氏の言葉を紹介している。「初期のモデルの一部では、たとえば、熱帯の海を海氷が覆うなど、まったくあり得ない予測が生まれたこともありました」。だが、将来の温暖化を初めて具体的に予測した1970年の画期的な論文で、真鍋氏は、1970年から2000年の間に地球の気温は0.57℃上昇するだろう、と述べている。そして、実際に0.54℃の気温上昇が起きた。これは予測に非常に近い値だ。

 米カリフォルニア大学バークレー校のジーク・ハウスファーザー氏、米マサチューセッツ工科大学のヘンリー・ドレイク氏とトリスタン・アボット氏、NASAゴダード宇宙科学研究所のギャビン・シュミット氏らが発表した2019年の論文では、1970年代の17のモデルを分析した。その結果、14のモデルが温室効果ガスの増加と地球の気温との関連を正確に予測していたことが明らかになっている。

「一定量の二酸化炭素を大気中に放出すると一定の温暖化が生じるという基礎科学は、数十年も前から理解されていました」とヌッチテリ氏は言う。「1970年代の予測は非常に正確だったのですが、かなり単純化された気候モデルを用いていました。気候システムに関する理解が十分でなく、また当時のコンピューターの能力には限界があったからです。その後、気候モデルは大きな進化を遂げました」

さらなる変化

気候モデリングの分野では「人間がCO2排出を増やすと世界がどれだけ温暖化するか、という点に関する総合的な評価はずっと変わっていません」。米テキサス工科大学の気候科学者で、自然保護団体ネイチャー・コンサーバンシーの主任研究員でもあるキャサリン・ヘイホー氏はこう話している。

「変わったのは、より小さな規模の空間や時間における私たちの理解です。気候システムの反応に対する理解、たとえば、北極がどれほど影響を受けやすいかという点に関する理解です」

こうした理解が深まるにつれて、ヘイホー氏が「現代の気候科学の最先端」と評する個別の事象についての研究が進化している。たとえば、米国西部の猛暑や2017年のハリケーン「ハービー」がもたらした豪雨といった特定の気候異変と、気候変動との間の関係が解き明かされるようになってきた。

「モデルがなければ、こうした研究はできませんでした」とヘイホー氏は語る。「人間のいない地球をシミュレーションするにはモデルが必要です。人間がいない地球と、人間が二酸化炭素を排出する地球とを比較しなければなりません。そして、この2つの地球を比較すると、人間がもたらす気候変動が特定の気候事象の持続期間や激しさ、被害の規模にまで影響を及ぼしていることがわかります」

 ヘイホー氏は、モデルが現実を反映していることを確認するため、モデルの誤りを探すことに多くの労力を割いているという。「現実と完全に一致していない場合は、私たちが理解していない部分があるはずですから、さらに綿密に調べます」

こうした矛盾はモデルの欠陥が原因であることもあるが、観測時のエラーによって生じることもある。たとえば、2005年、衛星データでは対流圏である下層大気で温暖化の兆候が確認できず、地球温暖化モデルに疑いが生じた。しかし調査したところ、実際はデータ自体に欠陥があり、気象観測気球のデータに裏付けられたモデルは最初から正しかったことが明らかになった。

米ペンシルべニア州立大学の大気科学の特別教授であるマイケル・マン氏は、こう話している。「私たち気候科学者の予測は人騒がせだと批判され、まともに取り合ってもらえませんでした。でも、皮肉なことに、その予測がむしろ慎重すぎたことがわかりました。今では、予測したよりも深刻な影響が現実のものとなっています」

マン氏は、大西洋の海流循環システムが崩壊しつつあることもその一例だという。「崩壊が生じることは予測していましたが、予測よりも早く起きています」。マン氏によれば、真鍋氏は数十年前にその可能性を最初に指摘した学者のひとりだ。「気候科学で起きていることが、気候モデラーにとって最悪の事態であることは確かでしょう。自分の最悪の予測が現実に起きることを目の当たりにするのですから」

科学が完璧ではないこと、そして、今でも複数の不確定要素があることを、モデラーたちは十分に認識している。

「モデルにはすべての物理プロセスが網羅されているのでしょうか。もしそうだとしても、正確に表されているのでしょうか」と、ヘイホー氏は言う。「そして、パラメータ不確実性という第2の不確実性もあります」。また、ヘイホー氏によれば、一部のプロセスは雲粒(雲を構成する粒子)など非常に小規模な範囲で発生するので、直接計測することができず、推定するしかない。「こうした点が不確実性を高めることは、言うまでもありません」

しかしながら、最大の不確実性をもたらすのは物理学ではない。私たち自身の集団行動であり、地球規模の温室効果ガス濃度の上昇を人類がどこまで受け入れうるかという点だと、彼女は指摘する。

「もし、炭素排出がもたらす影響を知らなかったら、もし、地球の気温上昇が私たちの食料、水、健康、住まいに関わる問題だと知らなかったら、私たちは行動を起こさないでしょう」

「だからこそ気候モデルはとても重要であり、私はこの仕事に携わっているのです。モデルは、私たち人間がもたらしている現在の状況を明らかにし、将来に何が起きるかを示してくれるからです。いつの日か、このすばらしい地球を理解するために気候モデルを利用したいものです。でも、現在の気候モデルは、『早く手を打たなければ!』と私たちに警告を発しています。私たちが腰を上げなければ、深刻で危険な結果を招くことになります」

文=KIERAN MULVANEY/訳=稲永浩子(ナショナル ジオグラフィック日本版サイトで2021年10月10日公開)

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