世界選手権3連覇中のネーサン・チェン(22=米国)が、まさかの4位発進に顔を覆った。

冒頭の4回転ルッツで転倒。成功例があるジャンプの中で最高難度ながら、これまで得意としてきた技でいきなり失敗した。続くトリプルアクセル(3回転半)は決めたものの、最後の2連続も1本目の4回転フリップがステップアウトとなり、得点を伸ばせなかった。

22年北京オリンピック(五輪)シーズンのSPは、英歌手ベンジャミン・クレメンタインの「エターニティ」と「ネメシス」を選んだ。「ネメシス」は18年平昌五輪のSPで、当時まさかの17位に沈んだ曲だったが、またも波乱の展開。演技を終えると、しかめた顔を両手で覆った。さらに頭も抱えて悔しがった。

取材には気丈に対応し「私も人間。緊張するし、試合前は不安にもなります。流れの中で何が悪かったのか、正確に見極める必要があると思う。自分に言い訳はしたくない。ミスを犯した」と反省した。

首位のビンセント・ジョウ(20=米国)とは14・54点、2位の宇野昌磨(23=トヨタ自動車)とは6・18点差。平昌五輪の総合5位を最後に、世界一3度を含めて国際大会10戦無敗の王者が窮地に立たされた。それでも「今季はたくさんの試合が予定されている。SPを試す機会は今大会だけではないので、できる限りの準備をして前に進みたい」とフリーに切り替えた。【木下淳】