分散型金融「DeFi」急拡大 大槻奈那さんらとThink!
日経電子版「Think!」は、各界のエキスパートが注目ニュースにひとこと解説を投稿する機能です。10月15~22日のニュースでは、マネックス証券専門役員チーフ・アナリストの大槻奈那さんが「DeFi(ディーファイ、分散型金融)」と呼ぶ新たな金融サービスについて読み解きました。このほか「米政府、半導体大手に異例の要求」「変わる結婚の最新事情」といったテーマの記事に投稿が寄せられました。(投稿の引用部分はエキスパートの原文のままです)
「DeFi(分散型金融)」関連ニュースをThink!
ブロックチェーン(分散型台帳)技術を使って、金融機関などを仲介しない金融サービスが急拡大し始めた。DeFi(分散型金融)と呼ぶ仕組みで、暗号資産(仮想通貨)売買や融資など市場規模は約1000億ドル(約11兆円)と1年で約5倍に急増した。
【大槻奈那さんの投稿】 市場規模は拡大したものの、昨年のDefi勃興時に調べたユースケースも投機かP2P貸出程度で、殆ど広がっていません。大企業から信頼を得られず、協業が進まないのが主因と思います。
Defiの本領は、投機ではなく、仲介コストをなくしスマートコントラクトで様々な情報が載せられること。銀行口座を持たない人も使えますし、晴れた日のみ送金するなど様々な条件が組み込めます。
確かに、Defiのハッキングは昨年比2.7倍で、今年の暗号資産ハッキングの7割以上を占める等脆弱です(CipherTrace)が、現時点で「怪しいもの」と切り捨てるのではなく、長い目で見て、技術を生かす方法を模索すべきと思います。
「米政府、半導体大手に異例の要求」関連ニュースをThink!
米国政府による台湾積体電路製造(TSMC)など半導体大手に対する異例の要求が波紋を広げている。世界的な半導体不足が一向に解消されない状況から、9月下旬、大手メーカーに対し、出荷に関する詳細な情報を45日以内に提出するよう求めた。だが、メーカー側は「機密事項」に当たると反発する。
【南川明さんの投稿】 多くの半導体企業は顧客情報を出さない方針だろう。米政府の要求はあまりにも無理があるように思える。各国には輸出入統計もあれば、各社の決算発表でも出荷地域別の売上開示は行われている。これを国別売上に仕分けしてもらい、代理店や商社経由の売上を集めれば、かなり正確にどの国が在庫を貯めているかは分析可能だろう。もう少し米国もスマートに行動しないと、米国への協力意欲は低下してしまう。
「変わる結婚の最新事情」をThink!
戦後最低の婚姻件数を記録する結婚氷河期にあっても、結婚したい若者は多い。ただし、価値を見いだしているのは学校や職場での〝運命の〟出会いから始まるドラマチックな恋愛結婚ばかりではない。
【天野彬さんの投稿】 世代的にとてもリアリティのあるテーマでした。
あとは記事で語られていない「現実」としては、マッチングアプリでは人気なユーザーがさらに人気を集めるという格差構造が存在することでしょうか。特に男性側では顕著です。まさに、インターネットを貫く「べき乗の法則(2割が8割を独占する)」がここでも働いているかのようです。
この恋愛領域でも起こる二極化を乗り越えるためにも、記事のように「モテる(性的な魅力がある)」以外の価値観ベースでのマッチングがより広がっていくべきだと思います。それは、ロマンチックな恋愛結婚だけではない、多様なかたちの共同性を社会が認めていくことにもつながるのではないかと思います。
「外食、時短継続相次ぐ」をThink!
東京都や大阪府が21日、飲食店への営業時間の短縮要請を25日からやめる方針を決めた。ただ、新型コロナウイルスの感染「第6波」への警戒から足元は客足の回復が鈍く、通常営業への復帰を見送る外食企業が相次いでいる。
【風早隆弘さんの投稿】 NTTドコモのモバイル空間統計をみると、平日の人出は、今週でも新型コロナの感染拡大前に対して大手町周辺で4割程度、霞が関周辺では2割程度の減少となっています。第6波への警戒もありますが、新型コロナで在宅勤務が定着したことも背景にあるとみています。新型コロナ前の18年の調査によれば、08年比で東京都市圏の人の総移動数は13%減少しましたが、通勤の総移動数は1%減にとどまっていました。東京都市圏の18年の平均通勤時間は片道47.7分、平均的な労働者の年間出勤日数は約250日です。働き方の変化は、消費者の行動を変えることで、小売り業だけでなく、社会構造の在り方そのものに変化を促すことになりそうです。
「日本電産・永守流経営」をThink!
日本電産の永守重信会長は1973年の創業から一代で連結売上高1兆6000億円の企業を築き上げた。「永守流経営」はどのように生まれ、関潤社長兼最高経営責任者(CEO)にどう引き継ぐのか。永守氏に聞いた。
【蛯原健さんの投稿】 ピア効果という言葉がある。海の向こうのスター起業家の格言よりも同僚や同級生が起業すれば「あいつがやれるなら俺も」という具合に、人は直に接する人からより大きく影響を受けるという考え方である。
永守氏は京セラ稲盛、オムロン立石といういずれも日本のレジェンド起業家というべき人々からの薫陶をここで挙げているが、いずれも京都というエコシステムに同時代に居たピア効果が大きい。他にも村田や堀場、任天堂山内氏などこの時代の京都は日本を代表する起業家を多数輩出している。
このような理由で、スタートアップとはハブ都市に群生するものである。
「日本の人材育成」をThink!
人口減少の制約を超えて成長を続けるにはイノベーションにつながる発想が欠かせない。日本は高い付加価値を生み出せる人材の育成で世界に後れを取る。
【大湾秀雄さんの投稿】 国も民間も博士号保持者に対する正当な評価をしていないことが問題です。国はこれだけエビデンスに基づく政策形成が重要だと言われているのに、博士号保持者の採用に熱心ではない。民間企業も博士号保持者の貢献度が高いにも拘らず、給与面で殆どプレミアムを払わないし、経営陣に博士号修士号を持った人が殆どいない。国が人材育成投資に予算を振り向けないのも、その価値を評価出来ていないからです。岸田内閣の新資本主義にも成長政策の要であるべき人材育成投資の視点が欠けている。安倍政権には女性活躍などの構造改革が柱としてあったが、今の政権では長期的視点がすっぽり抜けている。国も民間も、もちろん大学も危機感を持つべきです。
【投稿まとめ読み】
https://r.nikkei.com/topics/topic_expert_EVP00000
【エキスパート一覧】
https://www.nikkei.com/think-all-experts
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