東京オリンピック(五輪)の個人総合を史上最年少で制した橋本大輝(20=順大)が、初優勝を逃した。6種目の合計で争う個人総合決勝で、合計87・964点。あん馬の落下などを、他種目の好演技で補ったが2位。僅差で、同世代の張博恒(中国)に敗れた。

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橋本の強さの1つに「適応力」がある。繊細な感覚を持つ体操選手。メーカーごとに異なる器具の感触にいかにアジャストしていくかも重要な資質になる。今大会では東京五輪と異なり、中国製の器具が使用されている。違いを口にする日本選手はほぼ全員で、公式練習から苦戦する様子もあったが、この日の橋本は感覚を合わせてきた。

順大で指導するアテネ五輪金の冨田コーチは「感覚が鋭く、言葉で表現できる」と評する。例えばひねり技の練習をすれば、筋肉の部位の動きなどで修正点を具体的に分析してくるという。幼少期から通った佐原ジュニアでは、体育館の舞台から遊び感覚で小型のトランポリンを跳ぶのが日課。空中姿勢の動かし方を体得し、いまは言葉で体系化できている。

その効果が適応力につながる。「会場、器具が変わり、技が成功できないとなった時に、普段との違いを明確に言える。助言もしやすいし、自分でもやりやすい」と能力に目を見張る。

40連勝も記録した内村航平は「器具の違いは言い訳にしかならない。その時の器具に自分が合わせていくのが本物かな」と言う。この日は惜しくも敗れたが、そんな百戦錬磨の先輩が語る「本物」の条件も有している。【阿部健吾】