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藤井聡太三冠(19)が活躍するたびに、将棋ファンの間で話題になる小説がある。ライトノベル「りゅうおうのおしごと!」だ。作者の白鳥士郎さんに話を聞いた。(読売中高生新聞)
ラノベ向きの将棋、夢がある「竜王戦」を題材に
――「りゅうおうのおしごと!」を書いたきっかけは何ですか。
高校生の頃に同級生がアマチュアの「高校生竜王」になったことがあり、竜王という言葉のインパクトを覚えていたんです。
それで、ライトノベル作家になり、何か勝負事を書きたいと思ったときに、将棋を思い出しました。年齢や性別を超えて戦えるもので、しかも、対局者が2人なので、会話形式で書きやすい。戦法を必殺技のように書くこともできる。ライトノベルの題材に向いていました。
――「竜王」が作品のタイトルに使われていますね。
竜王はトップのタイトルであると同時に、そのタイトルをかけた竜王戦が、非常にわかりやすい棋戦なんです。
なんと言っても、下からどんどん勝ち上がっていくことができるトーナメントという形式。予選から勝ち上がっていくと、タイトル挑戦で段位は四段から一気に七段になり、獲得すると八段になれる。すごくわかりやすく数字が上がっていくので、トップまで一気に上がっていく様子が伝わるんです。
これが名人戦の予選である順位戦になると、リーグ戦になっていて、組がひとつずつしか上がっていかないので、名人になるまで5年かかります。でも、竜王戦は強ければどんどん上に行けるので、わかりやすいし、夢がありますよね。
――「竜王戦ドリーム」という言葉もありますね。
そうですね。あと、竜王という名前が、将棋っぽくないというか、なんだかファンタジーっぽいじゃないですか。
それを使いたくて、作品のタイトルを「りゅうおうのおしごと!」にしました。異世界転生モノがはやり始めていた頃だったので、間違えて買ってくれないかなあと思って狙ったんですけどね。
プロの棋士や女流棋士らの世界が舞台のライトノベル。2015年にGA文庫から刊行され、既刊15巻。18年にはアニメ化もされた。主人公は、15歳でプロ入りし、16歳で竜王を獲得した少年・九頭竜八一。史上最年少タイトルホルダーとなったがその後は思うように勝てずに苦しんでいた、そんな八一の前に、9歳の女子小学生・雛鶴あいが現れ、師匠と弟子として同居するように……という筋書きだ。刊行当初は「現実離れしている」という批判もあった。しかし、藤井三冠が現実離れした活躍を続けるうちに、「フィクションが現実に負けている」と話題を集めるようになった。
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