コロナ・エネルギー詰め残す 党首討論、首相は安全運転
枝野氏「有事は単独判断」強調
衆院選に向けて与野党の9党首が参加した18日の討論会は、新型コロナウイルス対策やエネルギー、安全保障でも政策論戦の詰めを残した。岸田文雄首相(自民党総裁)は党勢復調を踏まえて安全運転の受け答えに終始した。新型コロナへの新組織や原発政策で具体的な道筋を明示しなかった。
新型コロナ対応を巡っては首相が党総裁選で掲げた司令塔組織「健康危機管理庁」の質問が出た。所信表明演説や選挙公約に盛り込まなかった点を問われた首相は「司令塔機能は危機管理のあり方を総点検する上で議論を進める」と語るにとどめた。
創設まで時間がかかるのではと指摘されても「今の危機に司令塔が間に合うかは今後のコロナの状況次第だ」と目標時期を明確にしなかった。当面は厚生労働相と経済財政・再生相、ワクチン担当相の3閣僚が指揮する体制を続けると説明した。
立憲民主党の枝野幸男代表は首相直轄の組織を設けて「ワクチン担当閣僚を置くのはやめる。閣僚会議を定例化する」と強調した。PCR検査の拡大や水際対策の厳格化などで感染をなるべく少なくする方針を掲げた一方、1月に提起した「ゼロコロナ」には触れなかった。
2050年に温暖化ガスの排出を実質ゼロとする目標に関しては、首相に原発のリプレース(建て替え)の是非を聞く質問があった。首相の回答は「議論をしっかりした上で方針を決めていく」だった。「まずやるべきことは再稼働の問題だ」と訴えた。
共産党の志位和夫委員長から「石炭火力発電を30年までにゼロにする意志はあるか」と質問されても「大きな方向性を示しながら目標を実現していきたい」と話すだけだった。
日本経済新聞社の10月上旬の世論調査で、自民党の政党支持率は51%だった。8月末の39%から総裁選や新内閣の発足で上昇した。党内に改革路線の打ち出しを求める声は一時ほど多くない。
討論会で安全保障に関するやりとりは少なかった。ミサイルの発射地点をたたく「敵基地攻撃能力」の保有検討について、首相は「選択肢の1つとして考える価値はあるのではないか」と従来の発言から踏み越えなかった。
慎重な公明党をどう説得するかを聞かれても「国民の生命をどう守るかを議論して現実的に必要であれば理解していただける」との言及だった。
枝野氏は共産党と閣外協力をした場合に有事への対処ができるのか首相らの質問を受けた。「基本的には単独政権を担う」「有事には毅然と対応する」と発言した。
衆議院選挙2021の日本経済新聞電子版(日経電子版)の特集ページです。第49回衆院選(総選挙)は10月19日公示―31日投開票の日程で実施されました。