医師の訴え、響くか コロナ禍で衆院選出馬を決意

立候補予定者は医師の立場から聴衆に新型コロナ対策を訴えた=9日(宮野佳幸撮影)
立候補予定者は医師の立場から聴衆に新型コロナ対策を訴えた=9日(宮野佳幸撮影)

新型コロナウイルスの感染が国内で確認されてから初めて迎える衆院選。全国的に感染者数は減少しているものの、今後「第6波」の到来も予想される。19日公示の衆院選では与野党問わず、新型コロナ対応に関わってきた現役医師も立候補を表明。コロナ禍で浮かび上がった医療の課題や反省を機に出馬を決意した立候補予定者もおり、医師の立場からコロナ対策のありようを訴える。医師らの主張は有権者にどう響くか-。(宮野佳幸、吉沢智美、根本和哉)

「費用は低く、質は高い医療を誰もが受けられる、絶対的に大丈夫だと思った日本の医療だったが、(コロナ禍で)悪いところが出てきてしまった。非常時を考えたルールや思想を持つべきだ」

自民党から立候補を予定している新人(59)は商店街に集まった住民にこう訴えた。

この立候補予定者は現役医師として20年以上にわたり早期搬送のインフラ整備なども含めた救急医療に従事。県のコロナ対策連絡会議の専門部会にも参加し、感染者の入院時に優先順位を決める基準作りにも携わった。

コロナ禍を受け「国のために仕事をしたい」と出馬を決意。選挙戦では医師であることを前面に打ち出すつもりだ。「コロナ感染拡大の波を抑えていきながら、経済を元に戻していくビジョンを見せる政策が必要」と話す。

日本維新の会から立候補を予定する新人(65)も現役医師だ。これまでのコロナ対策に対し「治療薬やワクチン接種の体制など、どれもこれも遅い」と手厳しい。自身も医療機関の院長を務めており、ワクチン供給での国の対応が二転三転した結果、そのたびに振り回されたという。「小さなクリニックでは予定を組むのが大変」と、現場の苦労を身にしみて感じているだけに、訴えに力がこもる。

一方、政府の新型コロナ対応では、菅義偉(すが・よしひで)前首相が「切り札」と位置付けたワクチン接種をめぐり、接種順や供給不足などで混乱が生じた。医師の立場からこれまでのコロナ政策に異議を唱える立候補予定者も。

「ワクチンに懸念を持つ国民も多い中で、目的や安全性も含めて理解を求め、問題意識を共有しながら確実に接種してもらうべきだった」。立憲民主党から立候補を予定する前職(54)は、衆院議員と医師の二足のわらじを履き、ワクチン接種や感染者へのオンライン診療にも携わった経験を持つ。

優先順位をつけない職域接種により、「接種ありきになり、接種への国民の理解がいまひとつだった」と政府の対応を批判。「多くの方がワクチンやコロナに対する的確な情報に飢えている」として、医療を受けられない状況を避けられるよう「かかりつけ医」制度の推進も訴えていくつもりだ。

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