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日本大学付属病院の建て替え計画を巡る背任事件で、日大が設計業務を発注した東京都内の設計会社に対し、当初は7億円超の着手金を支払う予定がなかったことが関係者の話でわかった。着手金は日大から流出した資金の原資になったとみられており、東京地検特捜部は、日大理事の井ノ口忠男容疑者(64)が大阪市の医療法人側に早く資金を提供するため、日大側に契約金額の一部を前払いさせたとみている。
井ノ口容疑者は日大医学部付属板橋病院(東京都板橋区)の設計業務契約を巡り、2020年8月上旬、都内の設計会社を介して、大阪市の医療法人「錦秀会」前理事長・籔本雅巳容疑者(61)が全株式を保有する都内の医薬品関連会社に2億2000万円を送金し、日大に損害を与えた背任容疑で7日に逮捕された。
日大は同年4月、プロポーザル方式で選ばれた設計会社との間で、設計などの業務を24億4000万円で契約した。関係者によると、井ノ口容疑者は設計会社側に対し、医薬品関連会社に2億2000万円を送金するよう繰り返し指示したが、設計会社側が資金繰りなどを理由に難色を示したため、着手金の支払いを日大側に提案したという。
日大が工事などの際に着手金を支払うのは異例とされるが、同年7月下旬、約7億3000万円が設計会社に支払われた。特捜部は、この結果、医薬品関連会社への送金が可能になったとみている。
一方、日大では8日、臨時理事会が開催された。複数の日大関係者によると、井ノ口容疑者に対する理事の辞任勧告を決議。日大が100%出資し、井ノ口容疑者が取締役を務める「日本大学事業部」でも臨時株主総会が開かれ、解任が決定された。田中英寿・日大理事長(74)は、体調不良を理由にいずれも欠席したという。