サイエンス

心拍数を抑えるよう意識づけるゲームは子どもや若者の反抗的行動を減少させる


神経発達障害の1つとして知られる「情動調節不全」には、向精神薬や認知行動療法が効果的ですが、重大な副作用があったり、治療中断の割合が高かったり、実際のスキルに結びつかないなど、いろいろな問題があります。ボストン小児病院やハーバードメディカルスクールなどの研究者らは、「情動調節不全」の既存の治療法を補う「RAGE-Control」というゲームを開発。これまでに比べて、よりうまく「怒り」をコントロールすることに成功しました。

Frontiers | A “Proof of Concept” Randomized Controlled Trial of a Video Game Requiring Emotional Regulation to Augment Anger Control Training | Psychiatry
https://doi.org/10.3389/fpsyt.2021.591906


Video game with biofeedback helps kids and teens regulate stress and anger
https://medicalxpress.com/news/2021-10-video-game-biofeedback-kids-teens.html

研究者らが開発した「RAGE-Control(Regulate And Gain Emotion-Control)」は、宇宙を舞台にした非暴力ゲームです。大まかにいえば「スペースインベーダー」のようなゲームで、画面下部にある宇宙船を操作し、友好的な宇宙船はそのまま通過させ、小惑星は撃って破壊することが目的。ポイントは、心拍数が設定されたベースラインを7bpm上回ると小惑星を撃てなくなるという点。このため、プレイヤーは気持ちを落ち着けることが求められます。


研究対象となったのは、ボストン小児病院の外来精神科クリニックに通院する10歳~17歳の青少年40人。半数は「RAGE-Control」により強化されたアンガー・コントロール療法(ACT)を行い(ACT-Rグループ)、残り半数は「RAGE-Control」の偽バージョンによるACTを行いました(ACT-Sグループ)。偽バージョンはプレイヤーの心拍数の入力がないため、小惑星を撃つにあたって心拍数を抑える必要はありませんでした。「RAGE-Control」は1ラウンドが3分で、ベースライン心拍数はプレイ開始時の30秒の待機時間で測定されました。

両グループとも、評価は子どもたちの回答した「怒り」について35項目のアンケート、およびセッションに同行した両親による行動評価、臨床医による重症度評価で行われました。なお、被験者自身も両親も臨床医も、子どもたちがどちらのグループに属するのかという情報は与えられませんでした。

調査の結果、いずれのグループの被験者自身も「怒りが軽減した」と評価し、両グループで有意差はありませんでした。しかし、ACT-Rグループでは攻撃性、反発性、全体的重症度が大きく改善し、ゲーム中の心拍数の中央値も低いことが確認されました。

心拍数の低下が大きいほど、攻撃性や反抗的な行動の減少が見られたということで、研究チームでは、「RAGE-Control」のように、心拍数の制御をできるようにするスキルに焦点を当てた魅力的なゲームをさらに探求する必要があるとコメントしています。

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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