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EVシフトが開く車載電池「第二の人生」市場

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CBINSIGHTS
電気自動車(EV)の車載電池を蓄電池として再利用する技術に注目が集まる。EVは2020年代末に約1億4500万台が公道を走り、40年には年間で数億個の車載電池が寿命を迎える可能性がある。使用済み電池パックの多くは蓄電池として5~7年間再利用でき、低コストのエネルギー貯蔵源になるとみられている。車載電池を蓄電池にする際の課題やEVメーカーの今後の展開についてまとめた。

EV部門は急成長する構えを見せている。20年代末には公道を走行するEVは約1億4500万台と、20年比で10倍以上に増える見通しだ。つまり、40年には年数億個の車載電池が寿命を迎える可能性がある。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

だが、こうした電池は耐用年数を迎えてもなおかなりの蓄電容量を維持している。このため、手間とコストがかかるリサイクルや廃棄ではなく、蓄電池として再利用する「第二の人生」という選択肢がある。

車載電池の再利用は大きな商機が見込める分野だ。エネルギーデータ大手ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)によると、40年には電池技術への年間投資額は約1000億ドルに達し、そのうちの大部分が蓄電池に投じられる。

電池を再利用する技術はEVと電力系統の未来に大きなインパクトをもたらす位置に付けている。

「セカンドライフバッテリー(再利用電池)」とは

EVの電池パックは数百~数千個の電池セルからなる。電池パックの蓄電容量は時間が経つにつれて低下する。日常的な例では、スマートフォンの電池が1回の充電で持つ時間は2~3年後には短くなる。

こうした劣化に対する消費者の不安を和らげるため、大抵のEVメーカーは車載電池の容量が保証期間内に一定の水準以下に下がった場合には、無償で交換している。一般的な保証期間は最大8~10年または走行距離10万マイル(約16万キロメートル)だ。

もっとも、EVの電池パックは保証期間の終了やEVの廃車により「寿命」を迎えても、なおかなりの容量を保っている。実際、使用済み電池パックの多くの電池セルは蓄電池として5~7年間再利用できる。

なぜ蓄電池なのか

EVは電池パックから大量の電力を一気に引き出さなくてはならない(停止状態から時速60マイルに加速する場合など)が、蓄電池は数時間単位で電力を徐々に引き出すため、EVほど瞬時に大量の電力を消費しない。

車載電池の再利用にかかるコストは性能検査と再組み立てだけのため、これは電力系統にとって低コストのエネルギー貯蔵源になるとみられている。安価な太陽光発電や風力発電などの電源と組み合わせれば、電力会社の電気提供コストが減り、消費者に還元できる。

車載電池を再利用した蓄電池は電力系統に低コストの二次的サービスも提供できる。例えば、電力系統は一定の周波数(米国では60ヘルツ)で運用されており、システムをその周波数帯に維持しなくてはならない。電池は周波数を調整し、補助装置を追加することなく周波数を維持できる。送電線の混雑軽減にも活用できるため、電力会社は費用がかさむ設備改修を先送りできる。

課題は何か

車載電池の再利用における主な課題は、使用済み電池パックの再利用可能なセルと劣化したセルの判別だ。セルは一定の基準以上に劣化すると有毒な化学物質を放出したり、発火したりする恐れがある。だが電池のモニタリングシステムでは個々のセルを追跡できず、EVメーカーは企業秘密を明かすことになる可能性があるため、外部企業に電池の性能を示すデータを公表したがらない。

この課題に対処するため、電池メーカー各社はいくつかの手法を使って使用済み電池セルの状態を診断している。最も一般的なのは、一定の手順に基づいて個々のセルや複数のセルの充電と放電を繰り返す手法だ。これは時間がかかり、電池の残存能力の一部も使い果たすことになるが、劣化したセルと再利用できるセルを判別できる。

もう一つのテクニックはX線断層撮影や超音波などによる素材の特性評価だ。米タイタンAES(Titan AES)や米フィーシブル(Feasible)などの企業は超音波を使って電池の状態を診断する。この手法は迅速で効果的だが、車載電池の再利用に広く導入するにはなおコストが高すぎる。このため、充放電検査が引き続き再利用可能な電池セルを評価する主な手段になりそうだ。

再利用技術はどれほど進んでいるか、主なプレーヤーは

使用済み電池を再利用する技術はまだ開発初期の段階にとどまる。EV業界自体が比較的新しく、使用済み車載電池の供給が現時点では限られているのが主な理由だ。もっとも、ここ1年半で関心は高まり始めている。

電池の再利用がニュースで取り上げられた回数は増加傾向にある。20年5月には急上昇した。米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究により、EVメーカーが再利用された車載電池を「太陽光発電と蓄電を組み合わせる」技術を開発する企業に販売し、収益を得られる可能性があることが明らかになったためだった。韓国・現代自動車傘下の起亜と同化学大手SKイノベーションが20年9月、車載電池の循環経済を構築するために提携を発表した際にも関心が高まった。

この分野の米企業は提携や実証実験に力を入れている。例えば、ロンバス・エナジー・ソリューション(Rhombus Energy Solutions)とスマートビル・エナジー(Smartville Energy)は米カリフォルニア州チュラビスタ市と提携し、再利用電池の蓄電池を活用したEVのモバイル充電インフラを提供している。一方、電池の評価技術の開発に取り組むタイタンAESは19年、シリーズAのラウンドで米ベンチャーキャピタル(VC)エナジー・イノベーション・キャピタルから1000万ドルを調達した。

再利用された電池を販売する企業は米国以外にもわずかだが存在する。英パワーボールト(Powervault)はこうした企業の中で調達総額が最も多く(約400万ドル)、住宅のバックアップ用電力システムを手掛ける。オーストラリアのレレクトリファイ(Relectrify)は使用済み車載電池を活用した産業・商業用電池「レボルブ(ReVolve)」を開発した。

現時点では、再利用電池の大規模な試験運用は主に欧州で実施されている。

・パリでは、日産自動車が量産型EV「リーフ」の使用済み電池を使った蓄電池システムを、欧州本社のエネルギー管理に活用している。

・アムステルダムでは、日産、産業用機器メーカーの米イートン、オランダの建設会社BAM、車載電池の再利用を手掛ける独モビリティハウス(The Mobility House)が共同で、リーフの電池を使ってスタジアム「ヨハン・クライフ・アレナ」の蓄電システムを提供している。

・ドイツでは、モビリティハウスが独ダイムラーと独エネルギー会社GETECと提携し、車載電池1000個を搭載した容量13メガワット(MW)の定置型蓄電システムを構築した。

さらに、EVメーカー各社は再利用された電池から価値を引き出す独自のビジネスモデルを徐々に採用している。起亜とSKイノベーションは21年初め、使用済み車載電池のエコシステムを構築するために提携すると発表した。これはいわば「バッテリー・アズ・ア・サービス(BaaS)」だ。このモデルでは、自動車メーカーが車載電池を所有する。電池が耐用年数に達すると、自動車メーカーが回収して再利用し、最終的にはリサイクルすることで全体的な価値を高める。

EVメーカーや電力会社は採用にあたりどんな点を検討する必要があるのか。どんなメリットがあるのか。

車載電池の再利用における最大の課題は、古い電池の利用に伴う安全性に関するリスクだ。リチウムイオン電池が発火した事例は数例あり、製品のリコール(回収・無償修理)や、消費者が負傷し、企業の評判に傷がつく事態を招いている。蓄電池も無縁ではない。米テスラや韓国LG化学の電池システムも発火事件を起こしている。

こうしたインシデント(事故につながりかねない事態)を受け、車載電池の再利用にとって妨げになる規制と、恩恵につながる規制の両方が定められている。例えば、中国はある施設の爆発で消防士2人が死亡したのを受け、再利用された電池を使う蓄電池プロジェクトを全て停止している。

一方、欧州連合(EU)の規制当局は再利用電池を活用する企業が最初の利用時の性能データを簡単に入手できるようにする「電池パスポート」の導入を提案している。これが実現すればEVメーカーが再利用電池を活用する企業に性能データを提供するようになり、必要な検査の量が減る。

EVメーカーや電力会社は安全性の懸念に対処するための提携から恩恵を得られる可能性がある。例えば、米ゼネラル・モーターズ(GM)とカナダのライサイクル(Li-Cycle)はこのほど、電池の製造時に出るスクラップ材をリサイクルする契約を結んだ。一方、米バッテリー・リソーサーズ(Battery Resourcers)とホンダは2000万ポンド(約900万キログラム)以上の電池リサイクル処理能力を持つ新工場を22年までに稼働する。

電力会社はEVメーカーと提携することで、安価で安定したエネルギー貯蔵源を確保できる。一方、EVメーカーはEV生産から新たな収益源を得られる。

次の展開は

電池メーカーはこのところ、大手自動車メーカーから多額の投資を受けている。スウェーデンのノースボルト(Northvolt)が実施した資金調達ラウンド(調達額28億ドル)には、独フォルクスワーゲン(VW)が参加した。これも自動車メーカーが新車を全てEVに移行するのに伴い、電池の十分な供給を確保したいと考えていることが原動力になっている。こうした新たなEVが寿命を迎え始めると、自動車メーカーによる車載電池の再利用への注目度も変わるだろう。

起亜とSKイノベーションが追求する新しいBaaSモデルは、再利用電池を活用する分野で勢いづく可能性がある。他のEVメーカーにも広く採用されれば、EVメーカーの収入源が増え、電力会社に安価で潤沢なエネルギー貯蔵源をもたらす。タイタンAESやフィーシブルなどが手掛ける電池の性能評価技術も成長を遂げるだろう。

もっとも、寿命を迎える車載電池の問題についてEVメーカーが検討できる時間は限られている。

特に欧州では、規制当局からの車載電池の廃棄を減らすよう求める圧力が強まっている。このため、リサイクルしても採算が取れないタイプの電池(リン酸鉄リチウムイオン電池など)では、再利用がリサイクルや廃棄に代わる魅力的な選択肢になっている。(欧州で提案されているような)車載電池の廃棄を制限する規制が施行されれば、電池を再利用する技術に投資が向かうだろう。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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