スタートアップの育成環境、東京が世界9位に浮上
米調査会社が公表しているスタートアップ企業が育ちやすい都市の世界ランキングで東京が9位に浮上した。前年の15位から大幅に順位を上げ、日本の都市が上位10位以内に入ったのは初めて。資金調達のしやすさや人材の豊富さなどで高得点を獲得した。ただ都市が持つデータの活用が遅れるなど、さらに上位を狙うには課題も多い。
米調査会社のスタートアップ・ゲノムが22日、2021年の「グローバル・スタートアップ・エコシステム・リポート」を発表した。世界の主要都市の起業環境について、成功しているスタートアップの数や資金調達など6項目を採点して総合順位を算出した。同ランキングは世界のベンチャーキャピタル(VC)や大企業がどの地域のスタートアップに投資するかを考える材料となっている。
21年は1位のシリコンバレーを筆頭に上位10位のうち、米国の都市が5つを占めた。アジアでは4位の北京、8位の上海に続いて、東京が9位にランクインした。評価が高かったのは「資金調達」で10点満点中9点を獲得した。新型コロナウイルス禍が市場を揺さぶった20年においてもスタートアップの資金調達が堅調だったことが評価されたようだ。
電子商取引(EC)開設支援のヘイ(東京・渋谷)は米投資ファンドのベインキャピタルから70億円の出資を受けた。また建設業の施工管理アプリのアンドパッド(東京・千代田)が米VCのセコイア・キャピタルなどから60億円を集めるなど、海外の有力投資家が日本のスタートアップへの関心を高めている。
技術者や理系人材の豊富さなどを表す「人材」は9点、ユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)の数や国内市場の大きさを示す「マーケットリーチ」は8点とそれぞれ前年の7点、3点から大幅に改善した。
一方で、地域内のネットワークの充実度などを示す「コネクテッドネス」は前年と同じ1点にとどまった。調査に協力したデロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)によると、「都市が持つ医療などのデータを新興企業が使えるようになっていないことが背景にある」という。
東京都は今年3月に策定した「未来の東京」戦略で、30年にスタートアップ・エコシステムのランキングで5位以内とする目標を掲げている。DTVSの斎藤祐馬社長は「韓国やインドは大統領が率先してスタートアップ支援に乗り出している。日本も政府による資金支援や規制緩和を一段と進めてほしい」と話している。
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