ANALYSIS

バイデン氏、日豪印をまとめ中国ににらみ利かす 「クアッド」首脳会議

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中国に対抗するオーストラリア

(CNN) 日本と米国、豪州、インドの4カ国による協力の枠組み「クアッド」の首脳会議が24日、米首都ワシントンで開催される。アジアにおける米国の影響力の行方を占う重要な節目と位置付けられている。

クアッドの首脳会議が対面方式で開かれるのは初めて。バイデン米大統領と日本の菅義偉首相、インドのモディ首相、豪州のモリソン首相が「自由で開かれたインド太平洋」への取り組みを協議する。

米国の対アジア政策は現在、大きな変化を迎えつつある。バイデン政権がアジアで外交関係の強化を図る一方、日本は中国の軍備増強への強硬姿勢を強め、豪州が米英両国と結んだ防衛協定「AUKUS(オーカス)」には東南アジア諸国が不安を募らせている。

オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)のアナリスト、マルコム・デービス氏は、この重大局面でクアッドが次にどんな動きを取るかが極めて重要だと指摘する。

クアッドはジョージ・W・ブッシュ政権時代の2007年に提案されながらいったん保留になった。中国の経済、軍事大国としての台頭を受け、トランプ前政権下で17年に復活。アジア太平洋の主要な枠組みとして存在感を発揮するようになった。

「クアッドはアジア版の北大西洋条約機構(NATO)ではない。だが一方で、明らかに協調的安全保障の方向へ進んでいる」と、デービス氏は指摘する。

クアッドの安全保障対話に参加するバイデン米大統領(中央)とブリンケン国務長官。バーチャル会議形式で開催=3月12日/Alex Wong/Getty Images
クアッドの安全保障対話に参加するバイデン米大統領(中央)とブリンケン国務長官。バーチャル会議形式で開催=3月12日/Alex Wong/Getty Images

中国への対抗

アジアの外交環境は17年以降さらに大きく変容し、クアッドがより大きな意味を持つようになった。豪中関係は昨年4月、新型コロナウイルスの起源をめぐって悪化し、今も回復していない。トランプ政権の下で悪化した米中関係は、バイデン政権になってさらに冷え込んだ。米国は中国の封じ込めに向け、アジア諸国との外交関係を強化している。

豪州は米国の働き掛けを歓迎し、英国も含めた3カ国で互いに軍事情報や技術を交換するAUKUSを締結した。

日本も米国の積極的な関与を歓迎する。習近平体制の初期には関係改善を目指したものの、ここ1年は警戒感を強めてきた。岸信夫防衛相は今月、CNNとのインタビューで、東シナ海での中国の行動に対して領土を断固守り抜くと語った。

CNNの単独インタビューに答える岸信夫防衛相=9月
/CNN
CNNの単独インタビューに答える岸信夫防衛相=9月 /CNN

米ジャーマン・マーシャル財団(GMF)のアジア部門を率いるボニー・グレイサー氏によると、クアッドの中で中国との敵対に最も慎重な立場を示しているのはインドだ。昨年半ばに兵士少なくとも20人が死亡した中国国境での衝突以降は、中国との対立を避けてきた。ただし、米国との間では合同演習や武器購入、技術移転を通し、軍事的なつながりを強めている。国境沿いやインド洋で中国の動きを監視する必要に迫られ、追跡技術などの強化を図っているとみられる。

クアッドの対中戦略がどこまで進むかを左右する要因としては、インドの意向に加えて中国自身の動きも挙げられる。中国が他国に脅威を及ぼそうとすれば、それだけ相手の抵抗も強まると、グレイサー氏は指摘する。

中国国境に向かうインド軍の車列/Yawar Nazir/Getty Images
中国国境に向かうインド軍の車列/Yawar Nazir/Getty Images

台湾で団結

首脳会議では台湾が主要な議題のひとつになるとみられる。米国はトランプ前政権から現政権にかけ、武器売却や外交官の訪問を通して台湾とのつながりを深めてきた。豪州も常々米国とともに、台湾への支持を表明している。日本の麻生太郎副首相は7月の演説で、台湾が侵攻を受けた場合は集団的自衛権を行使できる存立危機事態につながる可能性に言及した。

8月のクアッド高官会議では、「台湾海峡の平和と安全の重要性」を強調する声明が発表された。グレイサー氏は、この声明が首脳会議での台湾をめぐる協議を先取りしていた可能性を指摘。この問題で豪州や日本に加え、インドも異例の強い態度を示せば、中国への強い警告になるとの見方を示した。

豪ローウィー研究所のベン・スコット氏は、クアッドが結束することで台湾に対する中国の動きをけん制できる可能性に言及する一方、行きすぎて紛争に発展することのないようニュアンスに注意する必要があると述べた。

AUKUS発表時のバイデン大統領=9月15日/BRENDAN SMIALOWSKI/AFP/Getty Images
AUKUS発表時のバイデン大統領=9月15日/BRENDAN SMIALOWSKI/AFP/Getty Images

AUKUSの影響

スコット氏はまた、クアッド首脳会議のタイミングについて、米国にとってはアジアへの幅広い関与を示すまたとない機会になるとの見方を示した。英語圏だけの協定という面を持つAUKUSに対し、インドネシアやマレーシアが最近、相次いで警戒感を表明しているためだ。

スコット氏によれば、中国はAUKUSについて、米国がアジアの軍事力だけに注目していることを示す例だと批判している。同氏は、米国が中国にうまく対抗するために、アジア太平洋における有益で包括的な協定としてクアッドを活用することが重要だと強調。「(アジア太平洋)地域の人心を掌握しようとするなら、第一に優先すべきは新型コロナウイルス感染症、第二は幅広い経済的安定と安全保障だ」と指摘した。

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