早霧せいな、一夜限りのコンサート 元宝塚トップ「どこまでも自由に」

初舞台から20周年を記念してコンサートを開いた元タカラジェンヌ、早霧せいな=東京都渋谷区(提供写真)
初舞台から20周年を記念してコンサートを開いた元タカラジェンヌ、早霧せいな=東京都渋谷区(提供写真)

元タカラジェンヌで女優の早霧(さぎり)せいなが、東京で一夜限りのコンサートを開いた。

宝塚歌劇団雪組の元トップスター。平成29年に退団し、女優に転じた。高視聴率を記録したドラマ「ドラゴン桜」で、やり手弁護士を演じたのは記憶に新しい。

今回のコンサートは13年に宝塚の初舞台を踏んでから20年になり、いわば「早霧せいな」の〝成人式〟を祝おうというもの。

ステージで早霧は、「男役を卒業して4年。次の大きな目標が見つからない。それは、でも、私には、どこにでも行ける自由があるということ。この自由をファンの皆さまと共有したくて、このコンサートを企画しました」と客席に語りかけた。

コンサートは、そんな「どこにでもいける」という思いを込めた書き下ろし曲「SOMEWHERE」で幕を開け、「私は昭和生まれだから!」と、中森明菜(あきな)「飾りじゃないのよ涙は」、工藤静香「嵐の素顔」、沢田研二「勝手にしやがれ」など昭和歌謡のヒット曲を次々に披露した。

〝男らしい〟歌いっぷり。白いパンツ姿で6人のダンサーを従えて踊る雄姿。まごうことなき宝塚のトップスターが、そこにはいた。

その意味で、やはりこの夜の白眉は、「NEVER SAY GOODBYE」など宝塚歌劇から劇中歌など7曲を披露した中盤だった。

そのなかの「僕は怖い」という歌が、「ロミオとジュリエット」の劇中歌であることは実は後で知ったが、ロミオの沈痛な思いは客席にいて確かに伝わった。

優れた歌唱は聴き手の記憶に作用し感情を揺さぶるが、宝塚でトップスターまで務めた人の歌唱は、芝居の場面をありありと再現する。

ただ早霧は、そんなことには無頓着なようすで、郷ひろみ「2億4千万の瞳~エキゾチック・ジャパン~」、氣志團(きしだん)「One Night Carnival(ワン・ナイト・カーニバル)」と派手な楽曲で終盤のボルテージをあげ、客席を楽しませることに専念した。

「20年はあっという間でした。いつでも不安があったけど、皆さんの声に導かれて、いまここに立っています。これからも、ともに過ごせる時間を…」としみじみと語ったが、突然「あ、でも約束はできない」といいだして笑わせた。そういう〝おちゃめ〟な女性のようだ。

「1回だけじゃ、もったいないよ。ねえ?」と、再び「SOMEWHERE」を歌って一夜限りのコンサートは幕を下ろした。

なお、早霧から渡された雪組トップスターのバトンを、今年4月に後輩に託した望海風斗(のぞみ・ふうと)がゲストで登場。雪組時代の「ルパン三世-王妃の首飾りを追え!」から「ルパン三世のテーマ」などを一緒に歌い、トップスターと2番手だった当時のままの息の合ったところを見せつけ、会場を大いに沸かせた。

「早霧せいな20周年アニバーサリーコンサート」。18日、東京都渋谷区のBunkamuraオーチャードホール。1時間33分。(石井健)

公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

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