Zoomの米IT企業買収、当局が安全保障リスク調査
【シリコンバレー=佐藤浩実】米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズによる米IT(情報技術)企業の買収をめぐり、米当局が安全保障上のリスクがないか調べていることが21日わかった。中国との関係を念頭に置いているとみられ、審査の動向次第でズームは成長戦略の見直しを迫られる可能性がある。
ズームは7月、147億ドル(約1兆6000億円)を投じてコールセンター向けのクラウドサービスを運営するファイブ9を買収すると発表した。これに対し、電気通信インフラへの外国の関与を審査する委員会が「米国の国家安全保障や法執行にリスクを与えるかどうかを判断する」ための調査が必要と書簡で指摘した。書簡は8月27日付。
ズームの広報担当者は日本経済新聞に対し「(買収に関して)様々な規制当局に申請を行っており、承認プロセスは期待通りに進んでいる」と答えた。従来どおり2022年前半の買収成立を見込んでいるという。
ズームはビデオ通話の技術を応用できる分野での事業拡大を急いでいる。最大規模となるファイブ9の買収でコールセンター向け事業を強化する狙いだったが、審査の動向によっては今後の戦略にも影響を及ぼす。
ズームはナスダック市場に上場。カリフォルニア州サンノゼ市に本社があり、中国には開発拠点がある。同社はかねて、エリック・ユアンCEO(最高経営責任者)は中国出身だが米国の市民権があると説明している。