アメリカ、ワクチン接種完了を条件に外国人の入国認める 11月から
アメリカは20日、日本を含む外国から渡航する外国人に対し、11月から新型コロナウイルスワクチン接種の完了を義務づけたうえで、入国を認める方針を発表した。
アメリカへの渡航制限は11月から緩和される。外国人旅行者はワクチン接種の完了やウイルス検査、接触者の追跡に応じることを条件に、アメリカへ入国できるようになる。
新型ウイルスの感染拡大を受け、アメリカは昨年初めから厳しい渡航制限を敷いていた。日本人は入国禁止の対象外だった。
今回の動きは、欧州の同盟国からの大きな要望に応えるもので、制限措置によって離れ離れになっていた家族や友人らが再会できるようになる。
ホワイトハウスの新型ウイルス感染症COVID-19対策チームのコーディネーター、ジェフ・ザイアンス氏は20日、渡航に関する新ルールを発表し、「これは国単位ではなく、個人単位で行うため、より強固なシステムと言える」と述べた。
「最も重要なのは、アメリカに渡航する外国人にワクチン接種の完了が義務付けられるということだ」
ザイアンス氏は、11月初旬に新ルールを導入するとしたが、正確な日にちは明らかにしなかった。
新ルールは陸路国境には適用されず、カナダやメキシコとの陸路での越境には引き続き制限が課されることとなる。
接種や陰性証明の義務付け
アメリカの渡航制限は当初、2020年初頭に中国からの旅行者に課された。その後、ほかの国にも対象が拡大された。
現行ルールでは、過去14日以内にイギリスをはじめとする多くの欧州諸国や中国、インド、南アフリカ、イラン、ブラジルへの滞在歴がある、ほぼ全ての非米市民がアメリカへの入国を禁じられている。
新ルールでは、外国人旅行者は渡航前にワクチン接種証明を提示するほか、渡航前3日以内のウイルス検査での陰性を提示する必要がある。入国時の隔離は不要となる。
関係者によると、新たな方針には予防接種を受ける資格のない子供など、いくつかの適用除外もあるという。
また、新ルールがアメリカで承認されたワクチンのみに適用されるのかどうか、すぐには明らかにされなかった。ザイアンス氏は、米疾病対策センター(CDC)が決定することになるとしている。
ホワイトハウスの情報筋がBBCに語ったところによると、英アストラゼネカ製ワクチンを接種した人や、1回しかワクチン接種をしていない12歳から18歳の子供については、「かなり細かく詳細」を検討しているところだという。結果次第では数百万人に影響が出る。
接種を完了していないアメリカ人も入国は可能だが、帰国前後のウイルス検査が必要となる。
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各国の反応
米政府は先週、渡航規制を解除するのにふさわしい時期ではないとしていたため、今回の渡航制限の緩和は多くの人を驚かせた。
ある英当局者は20日、今回の決定は青天のへきれきだったと、BBCに語った。
発表を受け、イギリスのボリス・ジョンソン首相は「うれしく思う」と述べた。
「ビジネスと貿易にとって素晴らしい後押しであり、大西洋のこちら側と向こう側にいる家族や友人同士が再会できるのは素晴らしいことだ」と、ジョンソン氏はツイートした。
ドイツのオラフ・ショルツ副首相もアメリカの渡航制限の変更を歓迎し、「ドイツと欧州の投資や輸出、大西洋間の関係にとって素晴らしい知らせ」だと述べた。
航空業界の反応
英ブリティッシュ・エアウェイズを傘下に持つインターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG)の株価が10%上昇するなど、アメリカの発表を受けて航空会社の株価は上昇した。
英ヴァージン・アトランティック航空のシャイ・ワイス最高経営責任者(CEO)は、旅行業界が回復するための「大きな節目」になるとした。
米アメリカン航空の会長兼CEOのダグ・パーカー氏は、渡航制限の解除への「科学的根拠に基づくアプローチ」を歓迎すると述べた。
「健康と安全という共通の目標を常に念頭に置き、ビジネスやレジャー、家族や友人との再会など、より多くのお客様に簡単でシームレスな海外旅行を再開していただけることを、我々は楽しみにしている」
旅行者も歓迎
旅行者からも喜びの声があがった。
「今日は幸せな日だ。ビッグ・アップル(ニューヨーク)、いま行くよ!」と、フランス人起業家のステファン・ル・ブルトン氏はAP通信に語った。渡航制限により延期となっていた米ニューヨーク旅行を楽しみにしているという。
アメリカでは新型ウイルスのパンデミック開始以降、4200万人以上が感染し、67万人以上が死亡している(米ジョンズ・ホプキンス大学の集計、日本時間21日午前時点)。
ホワイトハウスの新型ウイルス対策顧問を務めるアンソニー・ファウチ博士は20日、BBCのインタビューの中で、より多くのアメリカ人にワクチンを接種するよう求めた。