世界最大のトカゲ、コモドドラゴンが絶滅の危機

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世界最大のトカゲ、コモドドラゴンが絶滅の危機
2010年に撮影されたコモドドラゴン

国際自然保護連合(IUCN)は先日、レッドリストの最新版を発表。その中で、これまで「危急種」と分類されていたコモドドラゴン(コモドオオトカゲ)が1つ上の「絶滅危惧種」へと更新されました。世界最大のトカゲも、急速に変わりゆく世界の影響を受けているのです。

海面上昇がもたらす危機

コモドドラゴンは海面上昇という脅威に直面しています。コモドドラゴンはその名のとおりコモド島などインドネシアの島々のみに生息していることで知られており、その数は減少中。最新版レッドリストの分類に関するIUCNの声明文によれば、彼らの生息域は今後45年で海面上昇のせいで少なくとも30%減少すると予測されているそう。

2021年-2022年版のIUCNレッドリストは13万8000種以上を評価して、4万種近くが何らかの形で絶滅の危機にあると判明しています。悲しいことに約8400種が近絶滅種、そして1万5000種近くが絶滅危惧種か危急種に分類されました。絶滅の危機にさらされている生物の種類は、2019年版のIUCNレッドリストから1万種増えたといえば深刻さが伝わるでしょうか。“生きた恐竜”としてその大きさ、毒管、非常に発達した嗅覚、そして旺盛な食欲で知られるコモドドラゴンも絶滅に一歩近づいてしまったのです。

今回、カテゴリに変化のあった生物の中ではコモドドラゴンが最も有名かもしれませんが、憂慮すべき生物は彼らだけではありません。サメとエイの37%に絶滅の危機が迫っていて、どの品種も乱獲されており、およそ3分の1は生息地破壊の影響も受け、10%は気候変動による害を受けています。

危機を脱したマグロ

最新版に関しては朗報もあって、4種類のマグロが過去10年間よりも危険の低いカテゴリへと再分類されました。中には絶滅の瀬戸際から「低危険種」へとカテゴリが変わった品種もあるとか。

IUCNのマグロ研究グループを率いるBruce Collette氏はIUCNの声明文の中で「こういったレッドリストの評価は、サスティナブルな漁業のアプローチが生計手段と生物多様性のための非常に長期的なメリットと共に機能するという証拠。私たちはサスティナブルな漁業の割り当て量を強化して、違法漁業を厳しく取り締まり続ける必要があります」と述べています。

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鶏を食べているコモドドラゴン
Photo: Bay ISMOYO / AFP (Getty Images)

しかし、褒め言葉で挟んだところで絶滅に瀕している種が増えているという事実は変わりません。海洋と陸生の生態系の両方が人間の活動によって壊されているのです。今回の保全ステータスの変化は、コモドドラゴンが1996年に危急種として評価されて以来、初めてのこと。この再分類は、去年Ecology and Evolutionに掲載された、集中的に島に居住する個体群への気候変動の影響を警告する研究に基づくものです。

ロンドン動物学会の保全ディレクターAndrew Terry氏はIUCNの声明文の中で、スコットランドで開催される国連の気候変動の会議に触れながら「これら大昔からの生物が気候変動のせいで絶滅に一歩近づいてしまったという考えは恐ろしい。自然のための更なる呼びかけがグラスゴーでのCOP26の前夜、すべての意思決定の中心で行われる」と述べていました。

コモドドラゴンの属であるVaranusの最古の化石は約4000万年前に出現しています。この生物が直面する脅威は、飢えるホッキョクグマを目にするよりは可能性が低いとはいえ、とても現実的なもの。どんな保護保全の事例にも当てはまりますが、回避できる可能性のある悲劇を防ぐには集団的な努力を要します。

Source: IUCN, Ecology and Evolution,