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熊本地震で被災した熊本県南阿蘇村・
小山旅館は、湯治場として古くから歴史があり、中国の革命家・孫文や、視力、聴力を失いながら社会福祉活動に尽力したヘレン・ケラーも宿泊した。落差40メートルの「鮎返りの滝」を間近にのぞみ、紅葉シーズンには多くの宿泊客が訪れた。
しかし、熊本地震で旅館内に亀裂が走り、温泉をくむタンクが損壊。泉源のある斜面は大きく崩れた。高齢のオーナーが自力での復旧を断念したため、同業者や地元の住民らが手伝い、譲渡先を探していた。
取引先の紹介で旅館を訪れた熊本市の不動産会社「城よし」の田原佳代子社長(43)は、熊本空港からほど近く、熊本市内からもアクセスしやすい立地に加え、正面に滝をのぞむ抜群のロケーションに注目した。経営を交代して営業再開させることを決断し、国と県で復旧費の4分の3をまかなう「グループ補助金」の交付を受け、昨年から復旧工事を進めてきた。
8月6日、「小山旅館」の名前は残したまま、21ある客室のうち、半分で営業を再開。新型コロナの影響で大々的なPRは行っていないが、再開を知った常連客らが宿泊し、「懐かしい」と喜んでくれている。地元・栃木地区の住民には、かつて旅館で働いていた人も多く、「小山旅館が復活してくれてうれしい」と感謝されたという。
田原社長は旅館周辺にキャンプ場などを整備する構想も持っており、「夜には滝の音が聞こえ、自然に囲まれた非日常を味わえる。人が集い、癒やされる空間にすることで、地震からの復興と地域の活性化に貢献したい」と語った。