ウイグル族を顔認識する研究、「非倫理的」と物議 豪大学が論文撤回を要求

Uyghurs pray at a mosque in China's Xinjiang province

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画像説明, 人権団体は人工知能(AI)がウイグル人の迫害に使われる可能性があると懸念している。写真は中国・新疆ウイグル自治区で祈りをささげるウイグル人

中国の少数民族ウイグル族を識別する顔認識ソフトの研究が、オーストラリアで物議を醸している。この研究は豪カーティン大学の元教授が行っていたもので、中国が共同出資していた。

カーティン大学は、同大学の元教授による人工知能(AI)研究は倫理ガイドラインに違反しており、被験者にはインフォームドコンセント(十分な説明の上での同意取得)がなされていなかったとしている。大学側は出版社にこの研究に関する論文の掲載撤回を求めている。

出版社「ワイリー」はこの研究について再度検討していると述べた。

同社は声明で、同研究について以前も調査したが、「カーティン大学から提供された新たな情報を考慮し、この問題を再度検討している」と説明した。

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中国は大量虐殺や女性の強制不妊手術など、ウイグル族に対する数々の虐待疑惑に直面している。

人権団体は、中国が「再教育キャンプ」と呼んでいる大規模ネットワークに100万人以上のウイグル人を収容し、数十万人に懲役刑を科しているとみている。

中国は、ウイグル族を不当に扱っているとの批判を全面的に否定している。

少数民族の迫害に利用される恐れ

豪ABCニュースは2019年に当該研究について調査。人権団体は顔認識技術が少数民族の迫害に使われる可能性があると警告した。

この研究の著者で学者のワンチュエン・リウ氏はその後辞職し、中国の大学に移った。BBCは同氏にメールでコメントを求めている。

カーティン大学は、当該研究は大学側の同意なしに行われたものだとし、現在は監視を強化していると説明した。

しかし、豪議会の情報・安全保障委員会のジェイムズ・パターソン会長は、懸念は残っていると述べた。

「そもそもこの研究の実施がどのようにして許可されたのか、また、なぜこれほど長い間発見されなかったのかという、悩ましい疑問が提起されている」と、パターソン氏はABCニュースに語った。

動画説明, 駐英中国大使、BBC番組でウイグル人の強制収容否定 ビデオを見せられ

近年、大学をめぐる問題が火種となり、中国とオーストラリアの関係が悪化している。

民主派の中国人学生たちは、デリケートな問題について発言すれば、親中派から嫌がらせを受けることになると警告している。一方で豪政府は「前例のないレベル」の外国からの干渉に対抗するためのタスクフォースを設置した。