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今回は、昨年3月に出版された「ストライキ2.0」(集英社新書)という本についてご紹介したい。
「ブラック企業」の実態を暴いた今野さんが新著
著者は、若者の労働・貧困問題に取り組むNPO法人「POSSE(ポッセ)」代表理事の今野晴貴さん。1983年生まれで、一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程を修了。大学生だった2006年に仲間とNPO法人を設立し、労働法や社会学の知識を駆使して労働相談にあたっている。
2012年に出した著書「ブラック企業」(文春新書)は、第13回大佛次郎論壇賞を受賞した。ブラック企業とは、過重労働や違法労働、パワハラなどによって若者を使い潰す企業をいう。最近、「ブラック」という言葉の使い方については注意が必要だといわれるが(「ブラック・ライブズ・マター=BLACK LIVES MATTER=黒人の命は大切だ」活動が広まってからは特に)、ともあれ、「不安定な非正規でなく、何とか正社員で居続けたい」と願う若者の気持ちを悪用する企業の実態を暴き、わかりやすく社会に伝えた点で、今野さんの功績は大きいといえよう。
ストライキの全盛期は1970年代
その今野さんの新著である。でも、今なぜストライキ?という疑問を抱く方は多いかもしれない。ストライキといえば、運輸業や製造業で働く労働者が「賃上げ」を叫ぶ印象が強いが、そうした大規模なストは近年、ほとんど見かけないからだ。
それもそのはず、厚生労働省の「2020年労働争議統計調査」を見ると、ストライキが隆盛だったのは1970年代で、「半日以上のストライキの件数」のピークは1974年の5197件。それが1980年代には3桁台に、2000年代には2桁台に下がり、2020年にはわずか35件となっている。本書でも、「はじめに」に「なぜ、今ストライキなのか?」という副題が付いている。