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余剰となった食品を必要とする人に届けるフードバンクを支援する企業が東海地方でも増えている。コロナ禍に苦しむ困窮世帯を支えるとともに、売れ残るなどした食材を廃棄する「食品ロス」を減らし、SDGs(持続可能な開発目標)の実現に貢献する狙いがある。(中島幸平)
「捨てないで」
非営利組織(NPO)法人、フードバンク「セカンドハーベスト名古屋」(名古屋市北区)の倉庫には米、乾麺、みそ、イワシの缶詰、お菓子など様々な食品が並んでいた。規格外や賞味期限が数か月に迫った商品が多い。
食品はすべて企業や個人が寄付したものだ。子ども食堂、高齢者施設など年間200団体以上に無償提供し、困窮世帯の窓口となる社会福祉協議会にも届ける。
2009年に設立した。スタッフは約70人だ。寄付を受ける企業・団体数は15年の100から20年には243に増えた。コロナ禍で観光客が減り、売れ残った土産物などの提供を始めた企業もあるという。松岡篤史理事は「せっかく作った食品を捨てずに生かしてほしい」と話す。
3分の1ルール
みそや豆乳を製造するマルサンアイ(愛知県岡崎市)は20年1月から、セカンドハーベスト名古屋など計3団体に食品の寄付を始めた。
食品業界には「3分の1ルール」と呼ばれる商習慣がある。製造日から賞味期限までの期間の3分の1が過ぎた加工食品は、品質に問題がなくても小売店に納品しないというルールだ。メーカーは在庫を抱え、食品ロスが生まれやすい問題がある。マルサンアイの担当者は「商品の提供は社会奉仕につながる」と話す。冷凍肉まんなどを作る井村屋(津市)も昨年6月から同様の取り組みを始めた。
多くの保存食を保管している大手企業からも、賞味期限が迫った食品を寄付する動きが出ている。東海理化(愛知県大口町)は6月、賞味期限が半年~1年に迫った保存食用のパンや飲料水などの災害用備蓄食料を、フードバンクを手がける地元社協に提供した。7月にフードバンクと協定を結んだ大垣共立銀行(岐阜県大垣市)は、支店など3か所に食品収集コーナーを設置。企業や個人からの提供を募っている。
マッチング
フードバンクは、企業の善意や供給能力に左右されるため、安定的な運用が難しいとされる。問題解決に向け、三重県は7月14日、食品メーカーとフードバンクなどをウェブ上でマッチングするシステムの運用を始めた。
企業側が提供食品の情報を登録すれば、フードバンクが閲覧・選定できる仕組みで、参加者が数量や配送方法を決める。食品メーカーやフードバンクなど計20社・団体以上が参加している。県の担当者は「フードバンクなどは食品を集めるのに苦労しているが、提供意思がある企業も、窓口がわからない状態だった」と話す。
規模拡大が課題
食品ロスの国内推計値は600万トン(2018年度)。食品製造や外食など事業系が324万トンと半数以上を占める。ただ、全国フードバンク推進協議会(東京)によると、フードバンクの食品取扱量はここ数年、4000トンほどと横ばいで、企業の寄付も思うほど増えていないという。同協議会の米山広明事務局長は「コロナ禍で貧困家庭などで高まっているフードバンクへのニーズに応えられていない」と話す。
米国では食品の無償提供に過失責任を問わない「善きサマリア人の法」があり、企業が寄付しやすい仕組みが整っている。
日本でも、廃棄費用の節約や寄付を損金に算入できる税務上の利点があるが、製造物責任のリスクを恐れ、寄付を