ファイザーとモデルナ、EU向けワクチン値上げ FT報道
【ニューヨーク=白岩ひおな】英フィナンシャル・タイムズ電子版は1日、米製薬大手ファイザーとモデルナが欧州連合(EU)への供給契約で新型コロナウイルスワクチンの価格を引き上げたと報じた。ファイザーは価格を19.50ユーロ(約2540円)と従来の15.50ユーロから引き上げたと伝えた。各国で追加分を含むワクチン確保への需要が高まるなか、製薬企業が価格決定を左右しやすい構図がありそうだ。
モデルナのワクチン価格は25.50ドル(約2800円)と、最初の供給時の22.60ドルから上昇したという。一方で注文数が増えたため、以前に合意した28.50ドルよりは低くなったとした。従来価格との比較では、ファイザーのワクチンは26%、モデルナは13%の上昇となる。いずれも遺伝情報物質「メッセンジャーRNA(mRNA)」技術を使ったワクチンで、9割を超える有効性を示している。
フィナンシャル・タイムズが入手した契約書は、英製薬大手アストラゼネカや米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のワクチンとまれな血栓との関連性への懸念が高まった時期に再交渉を経て締結されたものだ。同紙は関係者のコメントを引用し、ファイザーとモデルナが市場における地位を使って「ワクチンの価値を高めた」と指摘した。
EUは夏の終わりまでに成人人口の70%のワクチン接種を完了させる目標を掲げ、5月には9月末までに製薬会社4社から10億回分以上のワクチンを受け取るとの見通しを示した。世界で感染力が強いとされるインド型(デルタ型)がまん延するなか、各国はワクチンの確保を急いでいる。EUは追加接種が必要になった場合などに備え、ファイザーのワクチン18億回分を追加で購入する権利を留保している。
ファイザーは7月28日、新型コロナワクチンの2021年12月期通期の売上高予想を335億ドルと5月時点の従来予想(260億ドル)から上方修正した。臨床試験(治験)を進める3回目の追加接種ワクチンがデルタ型への予防効果を高めるとのデータも公表済みだ。英調査会社エアフィニティは、mRNAワクチンを提供するファイザーやモデルナと他の企業との収益格差が22年にさらに拡大すると予測する。
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