フランス、ワクチン接種への抗議デモ激しく
【ウィーン=細川倫太郎】フランスで新型コロナウイルスワクチンの接種を促す政府の対策に対する抗議デモが激しくなっている。7月31日には各地で計20万人以上が参加し、「健康の独裁だ」などと声を張り上げた。現状では国民の過半は対策を支持しているものの、デモが長引けばマクロン政権は見直しを迫られる可能性もある。
マクロン政権に反対する極右政党「国民連合」などが呼びかけ、パリやリヨン、マルセイユなど主要都市を中心に180を超す抗議活動が発生した。デモが行われるのは3週連続で、参加者は前々週(11万人)、前週(16万人)から拡大している。パリでは一般市民が警察と激突し、警察は催涙ガスなどを使って対抗した。
フランスは感染力が強いインド型(デルタ型)が流行し、流行の「第4波」に見舞われている。7月に入って感染者が急増し、1日あたりの新規感染者は2万5000人前後で推移している。全人口の5割強にあたる約3500万人はワクチン接種を完了したが、若者の接種は遅れている。
仏政府は9日から、飲食店や大型商業施設、病院などを利用する際にワクチン接種の終了や検査での陰性証明を記載した「健康パス」の提示を義務付ける方針だ。世論調査では、国民の6割以上は健康パスの運用を支持している。ワクチン接種をしていないと、生活に支障が出る恐れがあるため、接種希望者は急増している。
イタリアでもワクチン接種を促す政府に反対するデモが起きている。伊政府は6日から、フランスと同様の措置を導入する計画だ。ドラギ首相はワクチンの未接種は死につながると警告し、国民に接種を強く呼びかけている。