エース岩渕真奈「逆境でこそ」 敗退もなでしこ精神体現

【東京五輪2020サッカー女子準々決勝】〈スウェーデン対日本〉前半、パスを出す岩渕真奈=7月30日、埼玉スタジアム(川口良介撮影)
【東京五輪2020サッカー女子準々決勝】〈スウェーデン対日本〉前半、パスを出す岩渕真奈=7月30日、埼玉スタジアム(川口良介撮影)

黄金時代の英雄から継いだのは背番号10だけではない。サッカー日本女子代表「なでしこジャパン」は30日、準々決勝でスウェーデンと対戦、1-3で敗れたが、FW岩渕真奈(28)は最後まであきらめず果敢に攻めた。栄光も挫折も知る者として、脇目も振らず、がむしゃらに、かつての絶対エース、澤穂希(ほまれ)さん(42)が示してくれた、泥臭く戦うなでしこ精神をピッチで体現した。

試合終了のホイッスルが鳴ると、90分間走り続けた岩渕は、両手を膝につき、下を向いてうなだれた。その後、目に涙をためながら、競技場を後にした。

5年前は芝生を踏むことすらできなかった。2011年女子ワールドカップドイツ大会優勝、12年ロンドン五輪銀メダルに続くはずの16年リオデジャネイロ五輪はまさかの予選落ち。今回は開催国枠での出場だ。

ただ、相手が強い逆境であるほど力を発揮するのが岩渕だと、小学校時代に所属した関前サッカークラブ(東京都武蔵野市)監督、小島洋邦さん(66)は知っている。

クラブ初の女子選手だったが、どの男子よりも上手で、人一倍練習した。勝った順に休める1対1の練習では他の選手が弱い相手を探す中、岩渕は必ず自分より強い選手を探した。練習時間が終わっても「もう少しやりましょうよ」。「こっちの方が疲れちゃう」(小島監督)ほどだった。

そんなスタイルは代表になってからも変わらない。なでしこ前監督の佐々木則夫(のりお)さん(63)は「小柄でフィジカルがない分、これまで工夫しながら泥臭いことをやっていた」と当時を振り返る。

予選終了後は「もっともっとひたむきに、全員で戦えるチームにならないと」と語っていた岩渕。その課題は、五輪後に持ち越された。(吉沢智美、永井大輔)

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