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地球温暖化が進んだ場合、今世紀末には国内の米の収穫量が20世紀末より約20%減少するとの推計結果を、農業・食品産業技術総合研究機構(茨城県つくば市)がまとめた。品質が低い米の割合も増える見込みで、暑さに強い品種導入などの対策が必要になると指摘している。
農研機構は1998年から20年間にわたり、岩手県と茨城県に所有する水田で、周囲の二酸化炭素(CO2)濃度を人工的に高める実験を行い、米の収穫量や品質への影響を調べた。
CO2濃度が高まると光合成が活発になり、収穫量が増えるとされるが、気温が高いほど増収効果が下がり、出穂後約1か月の平均気温が30度だった年は収穫量がほとんど増えなかった。さらに、でんぷんが十分に蓄えられずに白く濁る「白未熟粒」の割合が高まることもわかった。
これらの結果をもとに、今世紀末までに平均気温が産業革命前(18世紀)から約4度上昇する想定で計算したところ、収穫量は20世紀末の約80%にとどまることが判明。白未熟粒の割合も全国平均で約5%から約40%に増えると推定された。
同機構は「一部の農家では、高温耐性品種の導入が進みつつある。今後はその効果も算出し、被害軽減につなげたい」としている。
岩手大の下野裕之教授(作物学)の話 「今回の研究成果をもとに、日本の主食である米を安定供給できるよう、実際の農業に生かせる対策を考えていくことが重要になる」