日本中の視線が東京五輪に集まる中、プロ野球の日本ハムは勝負の後半戦へ向け、試行錯誤で準備を整えている。前半戦は30勝42敗9分け、借金12で最下位に沈んだ。後半戦の巻き返しへ、必要なものは何か。日刊スポーツ評論家の建山義紀氏(45)と森本稀哲氏(40)に、前半戦総括と後半戦の展望を聞いた。30日は現在、侍ジャパンで投手コーチを務める建山氏による「投手編」。31日に森本氏の「野手編」をお届けする。

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【前半戦総括】

チーム防御率だけを見れば、リーグ3位と健闘している投手陣。オフに勝ち頭の有原(レンジャーズ)がメジャーへ移籍し先発陣に不安が残ったが、ドラフト1位の伊藤が勝利数、防御率、奪三振でチームトップを記録するなど、首脳陣の想像を超える活躍で投手陣をけん引している。

伊藤は、キャンプからずっと見ていたが、ここまでやるとは思わなかった。もう少しスケールが小さいのかなと思っていたけど、直球の強さと決め球の変化球は、一流投手のボールと遜色ない。投げること以外でも、修正能力やピッチングセンスが抜群で、早いカウントからの大胆さが高い奪三振率につながっている。

救援陣の収穫は、堀と河野だ。堀は三振の取れる能力を前面に出して、自信を持ってストライクゾーンで勝負できている。これは、リリーフ投手に一番大事な要素。河野は、初球から狙ったところへ投げられる能力が生きており、適性を感じた。今季は打線がなかなか得点できず、投手陣にとっては圧迫感のある試合が多い。経験の浅い投手には大胆に投げることを覚えて欲しいのだが、打線が弱いと、どうしても1点を守る投球になってしまうので、気を付けたいところだ。

【後半戦展望】

とにもかくにも、ペナントレースは先発投手。浮上に欠かせないのは、上沢、伊藤に次ぐ先発陣の安定感だ。特に加藤は、できるだけ好不調の波を抑えたい。調子が悪い時に、どうして打たれるのかを試合中に理解しないと。先発3、4番手のひとり立ちが大事で、それができれば、リリーフ陣の負担も軽減される。

前半戦は、投手陣も野手も、チームで1つのことを共有するという意識がないと感じた。例えば、1点を防ぐために外野手が前に来る。じゃあ、投手はおのずと外野の頭を越さないような投球をしないといけないし、捕手もそういう配球をしないといけない。そこで、外野の頭を越えるヒットを打たれるというのは、チームとして全く1つのことを共有できていない証し。1人1人の調子が良くないせいもあって、チームとしてやるべきことをおろそかにしている場面が目立った。いつも、うまくいくとは限らないが、ぼんやりと、おざなりに投げるのではなく、1球1球に意味を持って投げないと。それが、後半戦には絶対に必要だと思っている。(日刊スポーツ評論家=建山義紀)