新型コロナウイルス禍で1年延期された東京オリンピック(五輪)が23日に開幕する。フジテレビは入社7年目の宮司愛海アナウンサー(29)がメインキャスターを務める。週末のスポーツ番組「S-PARK」(土曜深夜0時35分、日曜午後11時15分)でスポーツと縁が生まれ、今日18日は「東京五輪5日前『ラストサプライズはこちらです!!』~日本代表に(マル秘)エールSP~」(午後7時)生放送でもMCを務めるなど、いよいよ本番モード。五輪放送への思い、その先の未来を聞いた。

★中継バドミントン勢に期待

コロナ禍での1年延期を経て、いよいよ五輪が開幕する。宮司アナは、開幕を待つ1年を振り返った。

「一番複雑な心境で、受け止め方が難しかったのはアスリートの方々です。その思いをどう伝えていこうか悩みました。自分自身もこの1年間をどう過ごしていこうか、まずは立ち止まって考えて、悩んだというのが始まりでした」

その間も、メインキャスターを務める土日の「S-PARK」の生本番、競技や選手の取材があった。

「切り替えて前を向いて、この1年間をプラスに、自分の実力を伸ばせるようにするんだ、と語る選手が大多数でした。取材を通して、その努力をただ真っすぐ真摯(しんし)に伝えていくことが、自分たちのすべきことかなと、私も切り替えられたと思います」

「S-PARK」のキャスターに就任するまでは、スポーツと真正面から向き合ったことはなかった。

「その前は『めざましテレビ』を主に担当していたのですが、最初にスポーツに触れたのは、大きいところでは18年の平昌冬季五輪。街の取材などもやっていました。スポーツど真ん中の取材は『S-PARK』担当になった18年の4月からです」

華やかな情報番組やバラエティーと違った厳しさが、スポーツ取材の現場にはあったと語る。

「とにかく大変、というか動揺することばかりでした。びっくりしたのは、競技、現場ごとに空気が全く違うこと。ルールはもちろん、選手のことも頭に入れて、現場で“落とし物”がないように、全部拾って帰るという作業で、いっぱいいっぱいでした。早く追いつかなきゃという気持ちの方が大きかったです」

試合を見て、選手の言葉を拾い、取材ノートを作り、放送を続けていく中でなじんでいった。

「日刊スポーツの五輪担当の記者さんもそうですし、お話ししたことのある方も増え、顔を知っている方もいる。自分にとって行き慣れた、ちょっとホーム感のある現場が増えたのかなと思います」

期待する選手を聞くと、敬意を示しながら答えた。

「取材させていただいた選手の方も、そうでない方も、出場される選手は一生懸命頑張って、ご自身の後悔のないように、というのが、一番大きい気持ちとしてあります。フジテレビでは8月2日にバドミントン男子シングルスを中継する予定なので、桃田賢斗選手たちには頑張ってほしいですね」

★村上の取材力刺激

宮司アナと五輪メインキャスターを務めるのは関ジャニ∞村上信五(39)。宮司アナは、その取材力が刺激になったという。

「五輪に向けた『情熱の鼓動』という特番でいろいろなアスリートに一緒にインタビューしました。アスリートの心を開くのが、とても自然にできる方です。私は試合とか競技とか、ド真ん中のことをいきなり聞きがちですが、じわじわ周りから攻め込んで本音を聞き出すのがお上手だなといつも感動しています」。

アスリート・メインキャスターは元プロゴルファー宮里藍さん(36)。

「相手の話をちゃんと心で受け止めて理解して、心から言葉を返している。ご自身がアスリートだった経験も含めて、人の心にどう寄り添うのか、熟知されている方だなと思います」

オリンピアンキャスターは、柔道男子60キロ以下級3連覇の野村忠宏氏(46)。

「オリンピックが何たるかを一番知っている方です。『S-PARK』でご一緒させていただいて、野村さんだったらどう思うのだろう、どんな言葉をかけるのだろうということが、1つの指針。大きな存在です」

大きな目標となった東京五輪が始まり、そして終わる。その後はどこに向かうのか。

「考えないわけではないのですが、あえて考えないようにしていると言いますか。東京五輪、来年の北京冬季五輪をへて、どういう気持ちになるのか。その時にしか分からない部分もあるでしょうし。終えてどうなるかなって、自分の心に聞いてみたいとは思います」

★今月29日が誕生日で30歳

五輪期間中の今月29日には誕生日を迎える。

「30歳になる。自分でもびっくりしています。20代の経験を還元していくのが30代だと思っています。ここから先、20代で積み重ねてきたことを、いろいろな感謝の気持ちも含めて表せるようになっていたら、いいなと。自分にとっては、すごく楽しみな30代だなと感じています」

結婚する同僚の女性アナウンサーも目に入る。

「いろいろ考えます。でも、なかなか分からないですね。そんなに焦ってもいないですし」

10年後、40歳の宮司愛海は、何をしているのか。

「20歳の時に考えていた10年後の自分と今は全く違うので、多分、自分が今思っている40歳の自分と全く違うことをしていると思います。20歳の頃は、30歳の自分を、もう結婚して子供がいるのかなと思っていました。結婚している友達もいますが、幸せの形は人それぞれ。友達の幸せは、私の幸せでもありますし。自分がこうあるべきと思うでもなく、自分なりにやりたいことをやって、その先に結婚や家族を持つ希望があればそうできたらいいなとは思っていますが」

就職する時はアナウンサーにこだわらなかった。営業、番組制作と幅広く自分の可能性を探った末の現在だ。

「アナウンサーの仕事は、正解がない。ここまで行ったら終わりだとか、ここまでやったら満足だっていうことがない仕事だと、日々感じています。いつか満足する時が来るのか、もしくは、ずっと足りないと思って続ける原動力になっていくのか、自分でも分からないんですよね。でも、私の性格上、きっとがむしゃらに働き続けていく気はしています」五輪キャスター宮司愛海。選手たちの活躍の原動力になるはずだ。【小谷野俊哉】

▼フジテレビ系東京2020五輪オリンピアンキャスター野村忠宏氏(46)

「S-PARK」のメインキャスターになったころは、とまどいもあったと思います。全く知らないところから、競技のルール、選手の性格や置かれている状況への理解、結果のチェックなど、相当努力をされたと思います。それに選手というのは“個性の塊”。選手のリアルとスポーツを伝えることには苦労もあったはず。宮司さんからはスポーツへの熱量、選手へのリスペクトを感じます。勉強熱心で、プロ意識の高い方です。スポーツというものは夢が詰まったものですが、残酷な結果も伴います。それを冷静に、時に感動と興奮、悔しさを交えて伝えることができるすてきなキャスターです。

◆宮司愛海(みやじ・まなみ)

1991年(平3)7月29日、福岡市生まれ。早大文化構想学部卒業後、15年フジテレビ入社。「めざましテレビ」などを経て、現在は「S-PARK」「潜在能力テスト」「村上信五∞情熱の鼓動」、スポーツ中継を担当。趣味はカラオケ、ピアス集め。漢検2級、日本語検定3級。158センチ。血液型O。

◆「S-PARK」

土曜深夜0時35分、日曜午後11時15分。メインキャスターは宮司アナと中村光宏アナ(36)。フィールドキャスターは鈴木唯アナ(27)と黒瀬翔生アナ(26)。日曜レギュラーコメンテーターは野村忠宏氏。

(2021年7月18日本紙掲載)

フジテレビの宮司愛海アナウンサー(2021年6月撮影)
フジテレビの宮司愛海アナウンサー(2021年6月撮影)
フジテレビ宮司愛海アナウンサー(2021年6月撮影)
フジテレビ宮司愛海アナウンサー(2021年6月撮影)