男子60キロ級で16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)銅メダルの高藤直寿(28)が、決勝で楊勇緯(台湾)を延長の末に指導3の反則勝ちで下し、今大会の日本金メダル第1号となった。全4試合中3試合が延長戦となる激戦で、執念で五輪王者の称号を手にした。

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しっかり相手のことを研究して試合に臨む、高藤らしさが出た決勝だった。彼はオタクではと思うほどビデオで徹底的に研究するタイプ。その分析を生かし、手足が長い楊勇緯に技を出させない組み手を貫いた。それによって相手は攻め手をなくし、結果として3つの反則を重ねた。ここ数年で急激に力をつけてきた楊のような若手選手に対しては、ともすれば対策が後手に回りがちだが、そんな相手にも高藤は抜かりなく準備を進め、しっかり勝利に結びつけた。

この日の高藤は2回戦から落ち着いた表情をしていた。決勝直前もギラギラした気持ちを抑え、穏やかな顔つきだった。大一番でも冷静さを保ち続けていたからこそ、広い視野を持ち、落ち着いて試合を進められたと思う。

準々決勝、準決勝、そして決勝とすべて延長戦にもつれ込んでの勝利だった。これまでなら気持ちが折れてしまいかねない場面でも、よく我慢して戦い続けた。体力面はもちろん、精神面での成長も強く感じた。(海老沼匡 12年ロンドン、16年リオデジャネイロ五輪銅メダリスト)