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メダルが期待されるバドミントンの女子代表。勝負師の雰囲気をまとう24歳の山口茜(再春館製薬所)が「奥原さん」と言い、快活な26歳の奥原希望(太陽ホールディングス)は「茜ちゃん」と親しみを込めて呼ぶ。性格もプレースタイルも違う2人は、互いに尊敬の念を持って火花を散らしてきた。決勝での日本勢対決実現も期待できる。
回避できた「つぶし合い」
瞬発力に優れる山口は、難しい体勢で食らいつく守備や、相手の裏をかいて放つ強打が魅力だ。奥原が言う。「茜ちゃんには、私にない発想がある。面白いなと思うし、単純に、本当にすごいなと思う。スーパー小学生、スーパー中学生、スーパー高校生と、どの年代でも存在感があり、良さを伸ばしている」
豊富な運動量が持ち味の奥原は、軽快なフットワークを駆使したラリー戦を得意とする。山口の分析はこうだ。「奥原さんとの試合はラリーが長くなり、我慢できずミスをしてしまうところが難しい。泥臭い試合になったら向こうの勝ち。我慢の中で自分が仕掛けるチャンスを見つけられるかは、自分次第で変わる」
国際舞台で当初リードしたのは奥原だった。初対戦の2012年アジアユース選手権から、男女を通じて日本シングルス初のメダルとなる銅を獲得した16年リオデジャネイロ五輪の準々決勝まで、6戦全勝と引き離していた。山口の初勝利はリオ五輪から1か月後のヨネックス・オープン(当時)。この時、山口は「1回でも勝てたことで、少なからず、何かしら変わってくると思う」と手応えを語った。実際、以降はほぼ互角の勝負を演じている。
山口は18年4月、日本男女シングルス初の世界ランキング1位に立った。奥原も19年10月、山口に続き日本女子シングルス2人目となる世界1位の座を獲得した。21年7月6日発表のランキングでは、奥原が3位、山口が5位につけている。
勝ったり負けたり、近年は互角
東京五輪では、2人が決勝まで顔を合わせないトーナメント表が、7月上旬に確定した。2人のランキングが現在ほど高くなかったリオ五輪では準々決勝で「つぶし合い」をする事態になったが、ともにランキング上位をキープして迎えた東京では、それを回避することができた。
五輪会場となる武蔵野の森総合スポーツプラザ(東京都調布市)で行われた19年夏のダイハツ・ヨネックス・ジャパン・オープンでは、山口が決勝で奥原を破った。オリンピックの1年延期が決まった後、20年12月に町田市立総合体育館(東京都)で行われた全日本総合選手権では、奥原が決勝で山口に競り勝った。戦い終えて、奥原は胸を張った。「茜ちゃんとレベルの高い試合ができたのは誇らしい」
日本の双璧は、世界屈指の実力者同士。8月1日の決勝が金メダルを懸けた日本人対決になる可能性は十分にある。