侍ジャパン24人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる連載「侍の宝刀」。広島森下暢仁投手(23)は今季13試合に先発し、クオリティースタート(QS、6回以上、自責3以下)を12試合で達成している。先発のかがみといえるズバ抜けた「ゲームメーク力」を、東京オリンピック(五輪)の舞台でも発揮する。

19年8月、U18W杯壮行試合の高校日本代表-大学日本代表戦で力投する大学日本代表先発の明大・森下
19年8月、U18W杯壮行試合の高校日本代表-大学日本代表戦で力投する大学日本代表先発の明大・森下

「常に最少失点でという思いでやってますし、QSが続いていますけど、3点取られる試合も(今季で)6試合ある。やっぱり1、2点、最悪でも2点で抑えられる投球をしたいなと思っています」

試合をつくる能力の高さを示すのが、得点圏に走者を背負った局面で発揮する勝負強さだ。今季の得点圏での被打率は9分8厘。侍ジャパン先発候補の山本(2割1分1厘)、田中将(2割2分4厘)、大野雄(3割3分8厘)、千賀(1割9分8厘 ※昨季)と比べても、圧倒的な数字を示している。

洗練された持ち球は、全てが勝負球として使える。最速156キロの直球を軸に、切れ味鋭いカットボール、緩急球の縦に大きく割れるカーブ、チェンジアップ。そして今季からツーシームを改良したスプリットも加わった。稲葉監督は「制球力もそうだし、いろんな球種をもっているけど、全て扱える。1つ悪くても違う球で勝負できる。先発としてゲームをつくれる。自分から崩れるところがない」と絶大な信頼を寄せる。

フル代表は初選出ながら、国際舞台の経験は豊富だ。高校ではU18ワールドカップ(W杯)に出場。明大では2年から大学日本代表に名を連ねた。高校、大学と代表のチームメートでバッテリーを組んでいた中日郡司は、森下について「国際大会でめちゃくちゃ強いです」と証言する。持ち味の1つである縦に大きく変化するカーブは他国では珍しいといい、多くの打者が打ちあぐねていたという。これまで培った経験を生かした緩急自在の投球にも注目だ。

昨季は10勝3敗、リーグ2位の防御率1・91で新人王を獲得した。2年目の今季は6勝4敗、防御率2・29は青柳(1・79)に次ぐリーグ2位。名実ともに球界を代表する右腕の1人となった森下は、代表では背番号15を背負う。球界随一のゲームメーカーが、金メダル獲得へ、獅子奮迅の働きをみせるに違いない。【古財稜明】