<国際親善試合:東京五輪日本代表3-1同ホンジュラス代表>◇12日◇ヨドコウ桜スタジアム

日刊スポーツのサッカー担当記者が掘り下げる「Nikkan eye」は、東京五輪の日本代表が12日のホンジュラスとの国際親善試合(大阪・ヨドコウ)で見せた新しい可能性について分析する。左サイドにMF三好康児(24=アントワープ)が先発。MF久保建英(20=レアル・マドリード)、MF堂安律(23=PSV)と2列目に3人の左利きが並び、得点を期待させるシーンを幾度も作り、3-1での勝利に貢献した。

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見慣れない光景だった。右サイドに堂安、トップ下に久保までは鉄板。左サイドに三好が入った。本職は中央か右。2人に続く存在だったが、MF相馬とMF三笘がアジア・チャンピオンズリーグ出場で不在だったこともあり、静岡合宿では左サイドで主力組に入っていた。「2人を見ながらポジションを取るのも得意だし、合わせながらいい部分を引き出せれば」と、手応えを口にしていた。

ホンジュラス戦で三好が見せたプレーは、左を本職とする2人にはないものだった。タイミングを見て中央の久保とポジションを替わりながら、臨機応変にプレスに走った。右サイドで久保と堂安が流動的に入れ替わって崩す攻撃は、もともとチームの武器。三好が入ることで、久保の自由度がさらに高まった。選手が位置を変えることで、相手DFにとってはマークする選手を定めにくくなる。

もっとも、左サイド本職の2人は鋭い加速とドリブルが最大の持ち味。相馬は「(久保)建英、(堂安)律が右で作る。僕は(外で相手を)引っ張って、彼らのスペースを空ける」と、自身の特徴も含めて役割を理解している。ホンジュラス戦でも、3点目は相馬のピンポイントクロスに堂安が合わせたものだった。変幻自在のドリブルを持つ三笘、そしてさらに異なる武器を持った三好が左に入ることで、攻撃にオプションがさらに増えた形だ。

ホンジュラス戦を終え、試合後は課題を口にすることが多い三好から「練習の中から2列目とFW、ボランチ含めて攻撃に厚みが出るようになった。イメージの共有はできてきている」と手応えを実感する言葉があった。長くこの代表でプレーしてきたからこそ、隣に立つ久保の特長もよく分かっている。久保もまた「流れの中で三好選手がトップ下になることもあった。ポジションはあるが、臨機応変にやっていけたら」と、とっさの判断で呼応し合う関係であることを口にした。

欧州選手権ではイタリアが53年ぶりに優勝。決勝では大物ぞろいのイングランドを撃破した。前線には身長170センチ前後の選手も少なくない。後半には中央にはいった163センチのFWインシーニェが動き回ってスペースを作り、さらにサイドの選手が内に走り込む動きを何度も見せてDFに的を絞らせなかった。厳しいプレスとポゼッションで攻め立てる姿は、戦術こそ違えど、森保ジャパンが掲げるものと重なる部分もあった。

目指すスタイルは間違っていないということを、イタリアが見せてくれた。五輪で日本も続くために、次の優勝候補スペインとの1戦は試金石になる。三好、相馬、三笘。2列目の「最後のピース」に注目したい。【岡崎悠利】