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滴滴上場、時価総額7兆円 中国勢の米IPOは最高ペース

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【ニューヨーク=宮本岳則】中国配車アプリ最大手の滴滴出行(ディディ)が6月30日、ニューヨーク証券取引所に上場した。終値で計算した時価総額は約670億ドル(約7兆3700億円)を超えた。米中対立が続くなかでも、中国勢の新規株式公開(IPO)意欲は強く、件数と調達額は過去最高ペースで推移する。

滴滴は米投資家がドル建てで海外企業に投資できるようにする「米預託証券(ADR)」を上場させた。初値は16.65ドルで公開価格(14ドル)を19%上回った。終値は公開価格比1%高の14.14ドル。調達額は44億ドルで、中国企業による米単独IPO時の調達額としては2014年のアリババ集団(250億ドル)に次ぐ規模だ。

滴滴の時価総額は配車サービス企業としては米最大手ウーバーテクノロジーズ(約950億ドル)に次ぐ規模で、米2位のリフト(約190億ドル)の3倍となった。筆頭株主はソフトバンクグループ傘下の「ビジョン・ファンド」で2割を握る。ウーバーは中国事業を滴滴に売却した際、同社の株式を代わりに取得し、大株主に名を連ねている。

上場を成功させるため公開価格は保守的に設定された。米運用会社ルネサンス・キャピタルによると滴滴の時価総額は売上高の2倍強で評価されている。一方、ライバルのウーバーの時価総額は同8倍を超える。ルネサンスのキャスリーン・スミス氏も「滴滴の価格は同業対比でディスカウントされた水準」と指摘する。当初想定された時価総額(1000億ドル)には届かなかった。

投資家は中国政府による規制強化を懸念する。習近平(シー・ジンピン)指導部が国内のネット企業への統制を強めているためだ。ロイター通信によると、中国の規制当局である国家市場監督管理総局は滴滴が競合サービスを不当に締め出す手段をとっている疑いがあるとして独占禁止法上の調査を始めた。

米議会も中国企業に対する監視を強める。米上下院は20年、米上場の中国企業の監査体制が不十分だとして、米当局による検査を拒んだ場合、3年後に米国での株式売買を禁止する法案を可決した。米証券取引委員会(SEC)は法案成立を受けて、新しい上場ルールの策定を進めている。

中国企業の監査を巡っては、中国政府が自国監査法人に米当局の検査が入ることを拒んできた。問題の解決には米中当局による協議の進展が不可欠だが、まだ合意に至っていない。滴滴は上場目論見書のリスク情報開示で、SECによる新規制が上場に悪影響を及ぼす可能性に言及した。国内外の規制リスクが価格のディスカウントにつながったとみられる。

もっとも中国企業の米上場意欲は高まっている。米調査会社ディールロジックによると、21年に入って中国勢の米IPO件数は36件、調達額は125億ドルに達した。データが存在する1995年以降で過去最高ペースだ。米国株は最高値圏で推移し、投資家のリスク許容度は高い。赤字企業でも上場しやすい環境は中国のテック企業にとって魅力的に映る。

香港の外資系法律事務所で中国企業支援を手がける弁護士は「SECによる新規制導入後も既存の上場企業はすぐに上場廃止にならず、経過措置が入る」とみる。将来の上場廃止リスクを気にするより、目先の資金調達機会を追求する企業が多いという。いったん規制が変わると、新規上場のハードルは上がるため、駆け込み的に上場している面もあるようだ。

バイデン大統領は6月3日、中国企業59社への投資を禁じる大統領令に署名した。「米国や同盟国の安全保障、民主主義的な価値を損なう中国企業への投資を禁じる」として、軍事開発と監視技術を手がける企業をリストに並べた。一方で中国企業は引き続き米国上場を目指し、米国の投資家も高いリターンを狙ってIPOに参加する。国家間の覇権争いが激しくなっても、マネーの流れは止まらない。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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