最新記事

セレブ

BTSだけじゃない! 中国を怒らせた「出禁」セレブたち

China’s Blacklisted Celebs

2021年6月18日(金)12時19分
ジェイク・ディーン
BTS

朝鮮戦争に関する発言で騒動を起こしたBTS CBS/GETTY IMAGES

<台湾やチベット問題、ダライ・ラマは大きなタブー。『フレンズ』特別番組も場面カットの対象に>

大成功の「同窓会」だった。往年の人気ドラマ『フレンズ』のキャストらが結集した特別番組『フレンズ:ザ・リユニオン』がアメリカで配信開始されたのは5月27日。テレビでのストリーミング視聴が可能な世帯の推計29%が、当日にこの番組を見たという。

だが中国で視聴したのなら、それは少し違うバージョンだ。本作には数々のセレブがゲスト出演しているが、中国ではレディー・ガガとジャスティン・ビーバー、韓国のアイドルグループBTS(防弾少年団)の出演場面が削除された。

ガガが中国の「禁止歌手リスト」に入ったのは、2016年にチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマと会談した後。ビーバーは17年、中国文化部の公式声明によると、「不品行」を理由に国内公演を禁じられた。BTSが検閲対象になったのは昨年、朝鮮戦争に関する発言をめぐって、中国国内でボイコット要求が起きた事件を受けてのことだ。

こうした現象は目新しいものではない。中国には今も検閲制度が存在する。18年にはクイーンの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』が、フレディ・マーキュリーの性的指向やエイズ診断に絡む箇所をカットした上で公開された。

それだけではない。巨大な中国市場を意識するエンターテインメント業界は、中国への迎合姿勢で知られている。

映画のストーリーの内容まで

例えば、1980年代のカルト的戦争映画『若き勇者たち』をリメークした『レッド・ドーン』(12年)だ。ひどい出来の本作をもし見たことがあるなら、北朝鮮軍がアメリカを占領するという非現実的なストーリーに疑問を持ったかもしれない。

実は当初、アメリカを侵略するのは中国軍だった。だが撮影後、製作会社の判断で変更・再編集されたのだ。

なぜか。中国の反発を買いかねないプロジェクトに、多くの配給会社が尻込みしたせいだ。中国政府はひとことも口にすることなく、巨大なハリウッドを動かしてストーリーの前提そのものを変えることに成功した。

どうせ駄作なんだから、と思うかもしれない。しかし、これはハリウッドの「自己検閲」にとどまらず、表現の自由に恐るべき影響をもたらす問題だ。中国は、世界中の消費者の物の見方すら変える影響力を手にしている。

210622p52_ce03.jpg

豪華ゲストが出演する『フレンズ:ザ・リユニオン』だが... COURTESY OF HBO MAX

「世界的セレブが中国に登場する機会」を管理する。中国の検閲体制はかなり前から、そうした方向へシフトしている。中国での登場機会を失わないために謝罪を試みたスターは大勢いるが、それでは済まなかったケースもある。

ブラッド・ピットは20年近く中国から締め出されていた。『セブン・イヤーズ・イン・チベット』(97年)に主演したのが原因だ。

シャロン・ストーンは08年に起きた四川大地震について、チベット問題への対応の「カルマ(因果応報)」だと発言し、中国でボイコットされた(後に謝罪)。くまのプーさんは習近平国家主席に似ていると話題になって検閲対象になり、18年の実写版映画は公開が認められなかった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中