イギリスで感染なお拡大、デルタ株が猛威 ワクチンでリスク低減も

A view of Queen Street filled with shoppers

画像提供, Getty Images

イギリスで新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。過去1週間の新規感染者は11万9000人と、前の週の11万人からわずかに増えた。

政府の最新発表では、1日当たりの新規感染者は1万476人。陽性判明後28日以内の死者は11人だった。前週は感染者7439人、死者6人。

国家統計局(ONS)の統計では、6月12日の段階で人口の540人に1人が感染している計算になる。またイングランド公衆衛生庁(PHE)は、感染のほぼ全てがデルタ株によるものになったと述べている。

一方で、各種データからはワクチンの効果が出ていることがうかがえる。

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PHEの最新データによると、デルタ株が蔓延(まんえん)しているイギリスでも、ワクチンを1回接種することで、感染や重症化による入院リスクが75%減少している。

2回の接種を終えている人では、有効性は90%まで上がるという。

2021年2月1日から6月14日の間にデルタ株に感染し、入院した806人の内訳は以下の通り。

  • 65に当たる527人がワクチンを接種していなかった
  • 17%に当たる135人は、1回目のワクチンを打ってから21日以上経過していた
  • 10に当たる84人は、2回目のワクチンを打ってから14日以上たっていた

また6月14日時点で、イングランドでデルタ株への感染が判明し28日以内に亡くなった73人の内訳は以下の通り。

  • 47%に当たる34人がワクチンを接種していなかった
  • 14%に当たる10人は、1回目のワクチンを打ってから21日以上経過していた
  • 36%に当たる26人は、2回目のワクチンを打ってから14日以上たっていた

イギリスではこれまで、1回目と2回目のワクチンの間に12週間以上間を空けるよう指導されていた。しかしデルタ株の流行を受け、政府はこれを8週間まで短縮している。

動画説明, デルタ株の症状を解説 新型コロナウイルス

35歳未満の若年層で感染拡大

ONSは、自宅での検査で陽性が判明したイングランド住民の年齢別のデータも公開している。

それによると、35歳以上の感染率は低く推移している一方、それ以下の若年層や10代後半では上昇している。

一方、ウイルス感染者1人が次に何人に感染させるかを示す実効再​生産数「R」は、イギリス全体で1.2~1.4となっている。これは感染者が10人いた場合、平均12~14人にウイルスが広がる可能性を示している。

Graph of infections in young
画像説明, 英イングランドの年齢層別の感染率の推移。16~24歳は急速に上昇している一方、70歳以上は安定的に低く推移している

イングランドでは現在、全ての成人が新型ウイルスワクチンを接種できる。

スコットランドでは30歳以上が対象だが、グラスゴーの一部地域では18歳以上が1回目の接種を受けられる。

ウェールズと北アイルランドは、18歳以上にワクチンを提供している。

英健康安全保障庁(UKHSA)のジェニー・ハリス長官は、「イギリス全土で感染が急速に増え、デルタ株が優勢となっている。感染拡大は、大部分がワクチンを受けていない若年層に集中しているが、この年齢層も現在は接種対象になっている」と説明した。

「入院患者数や死者数が感染率と同じ割合で増えていないのは良い兆候だが、今後も詳細に監視していく。ワクチン接種事業と感染防止策の徹底が、引き続き命を助ける手立てだ」

ONSのサラ・クロフツ氏も、「(イングランドで)ロックダウン緩和が延期された今、今後数週間の感染率を追跡し、デルタ株の影響を分析することが大事だ」と述べた。